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281号 耐震偽装問題を考える

安全・安心を置き去り

マンションは何はともあれ安全を分母に置き、分子にライフスタイルや好みに応じた内・外装が求められているはずですが、重要な分母をないがしろにされた耐震偽装。その関与者には強い憤りを感じます。それによって安心が根幹から崩れ去っています。
耐震偽装問題には、安全・安心を置き去りにした、消費者無視の連鎖が丸見えなのに、売り手側すべての関与者が「言い訳」と「自分こそ被害者」とばかりの問題のすり替えに終始しています。すべての関与者の処理能力不足と、相互に依存し合い或いは丸投げした付けが問題を大きくしたのです。
「不幸にして耐震偽装マンションを購入した区分所有者」→「建築王」→「施工者」→「設計者」→「構造計算専門建築士」に加え、偽装を見抜けなかった「指定確認検査機関」という安全無視の連鎖、売り手側とそれを検査する側の仕事に取り組む姿勢と問題意識、そして倫理の欠如が浮かび上がっています。

食の安全との共通点

これは耐震偽装だけの問題ではありません。2000年6月、14,780人にもおよぶ被害者を出した雪印乳業食中毒事件も消費者無視、企業論理優先という点及び行政の関わりにおいて、耐震偽装問題で厚生省は、HACCP承認制度の実施要領の不備を認め、その改定を行い、HACCPに関する評価検討会を設置し、承認後の厚生省への報告等を手直しして監視を強化することとしました。

つまり、構造計算書の検査システムと食の安全を確保するためのHACCPのシステムはあるところで非常に似通っており、システムさえできていれば大丈夫という雰囲気がありました。実際はシステムを運用するのは人間であり、当然その一人ひとりが、誰のための、何のためのシステムなのかを理解し、それを守ることを前提にシステムは存在するのです。しかし、雪印でも耐震偽装でも、それらのシステムは自分たちがつくっていると考えなかった関与者の、消費者無視かつ、つくり手側の安易な利益追求がすべての根源と言え、関与者の品位や理念の欠如の何ものでもありません。

整理したい安全レベル

耐震問題で整理したいのは、「耐震偽装」「手抜き工事」「建築基準法(昭和56年改正の新耐震設計の前か後か)」の理解です。耐震偽装や手抜き工事は、安心・安全について消費者がもっと関心を持つべき事柄ということをつきつけられています。欺瞞に満ちた事業者を、選択肢から蹴落とすだけの「眼力」を養うことが必要です。
一方、建築基準法は国が定めた物差しで、それに合致してつくっているとすれば、一定の基準によって安心できるわけです。

目の見えない箇所の問題なので、建築主や施工会社に、自己のマンションの耐震性について質問することを手始めに、構造計算書を確認したり、簡易な方法としては設計上と施工上の鉄筋量とコンクリート量を比較する(ともに専門家に依頼の必要有り)といったことを自己のマンションの置かれている立場に応じて対応することが必要でしょう。

(論壇委員会)


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