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292号 見直される団地の植栽管理

―安全・安心な街づくりのために―

団地内の遊び場は潅木や生垣で囲まれている所が多い。午前中は親の監視下で幼児が遊んでいるが、午後になると全く人気がなくなるのが普通だ。千葉大学園芸学部中村功教授が「子供たちはどこで犯罪にあっているか」というショッキングな論文を発表している。

その中で、「1988年の宮崎事件以来、学校では夏休みに子供たちが行っていけない危険箇所に地域の公園が指定されはじめた。住宅団地では、樹木の多い空間へは子供たちは立ち入らず見通しの良い芝生でしか遊ばないことが明らかになった」とも書いている。

「放課後の午後3時か4時ごろに団地の公園でこどもが痴漢にあうケースが多い」という。「団地内の遊び場は、棟の通路側(多くは北側)で建物から離れた場所に造られている。公園などからは、建物に人影が全く見当たらない。バルコニーのある側の広場からは、住民の生活のにおいを感じる。3時ごろになると、ベランダで洗濯物を取り入れたり、鉢物に水遣りをするなど居住者の姿がある。しかしこのような南側の遊び場は例外に過ぎない。遊び場があっても外から覗かれるのを防ぐためベランダには“目隠し板”を取り付けている」とも指摘している。

団地内では見通しの利かない箇所ができて犯罪者の格好の隠れ場所にもなる。ついこの前まで緑豊かなパークシティ団地が理想的な住環境といわれていたが、防犯を優先しなければならなくなった。実際に外灯の明かりを通すための枝おろしや樹木の伐採に住民の抵抗が少なくなったとの話も聞く。一方、多くの団地では、生長した樹木が日照障害を起こして、その処置に理事会は悩んでいる。ところが駐車場増設のためにかなりの数の木を切って駐車場を増設し、住民は、緑が豊かな鬱蒼とした環境に執着していたものの、出来上がると住民から「団地が明るくなった」との好感の声が上がったという

70年代半ば、緑地を減らして駐車場を増設する計画に、車公害反対の近隣の運動家まで動員して押しかけられた時代とはまさに隔世の感がある。30年も経てば斯くも変わるものか。今の世の殺伐とした時代になって10年、20年後の人の心がどう変わるかを見通すことは難しいが、何もせずじっとしているだけでは、安心・安全な時代は来ない。今、やるべきことは分かっている。子供等を守るためにできることがある。改正標準管理規約にコミュニティ形成の重要性が採り入れられた。住民同士が互いに交流して互いに領域意識(同じ団地に住んでいる者同士という感覚)を高めることで、団地内の犯罪発生を防止したり少なくとも減らすことができるだろう。

(論説委員会)


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