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337号 救えなかったか、大阪2幼児遺棄事件

この夏、胸をいためる事件が起きた。大阪西区の繁華街にあるマンションで、3歳と1歳の姉弟が、23歳の母親に遺棄され、死亡した。部屋の中はごみの山、台所にほうちょうなど調理用具は何もなく、小さな冷蔵庫は空っぽ、幼児の手の跡が扉の内側に無数に残っていた。母親は、死体遺棄容疑で逮捕された。児童虐待のネグレクト(家に閉じ込める、幼児を残したまま度々外出する)の典型だが、マンションの住民から、3月から5月にかけ、ママ、ママと叫ぶ激しい泣き声がするなど数件の通報が、児童相談所にあった。

◆踏み込まぬ児童相談所

児童相談所職員は、3回ほど現場に来たが、母親あての手紙を郵便受けにいれるなどで、直接、親に会っていない。マンション住民は、管理会社に頼んだ方が早いと、掃除の女性に依頼するが、部屋を管理する別の管理会社は「建物の管理会社から幼児の泣き声を聞いたという苦情はまったく聞いていない」と話しているという。マンションは、分譲で80戸、ワンル―ムタイプが中心で、事件の部屋は、所有者から母親の勤める風俗店が借り受け、母親と幼児の3人で住んでいた。単身者が多いとはいえ、通報は確実に児童相談所にあった。幼児は何週間も食事を与えられず、クーラーもない猛暑の部屋で亡くなっていた。児童相談所には、事件直後から、全国から抗議の電話が数百件殺到した。児童虐待防止法が20年4月から改正され、カギを壊して室内に入る強制立ち入り調査(臨検・捜索)が可能になったが、保護者の特定などができないと立ち入り調査が不可能だとされる。長妻厚労相は、8月初め、児童虐待防止法の改正を示唆した。

◆「近助」の構築を

事件の舞台となったマンションの玄関には、事件後、付近の住民が幼児を弔って、花束やストローをさしたジュースなどを置いている。事件後、マンション住民が再発を防ごうと、住民同士が話し合える場づくりの動きも始まった。また、厚労省は8月末、住宅・不動産関連の業界団体に、虐待通報や安全確認の調査への協力を要請した。

マンションは鍵ひとつで住める、隣近所との面倒な付き合いを避けられる、という側面を合わせもつが、ここはひとつ、住民同士で隣近所に関心を持ち、助け合う「近助」をつくり直すことを考えたい。異変を知ったら、勇気をもって隣のドアをどんどんと叩こう。
何もしない管理会社やお役所の一片の要請を頼みとするより、「近助」の方が大事ではないか。

(論説委員会)


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