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410号 建て替えの「新たな選択肢」は妥当か~市街地再開発事業と区分所有法~

建て替えの「新たな選択肢」は妥当か~市街地再開発事業と区分所有法~

何ができ、何ができないか。国民は法律を基準に考える。国も法律の整合性には最新の注意をはらう。新しい法律を作るときには、既存の法律と矛盾のないように法制局が関連法のすみからすみまで検討する。こうやって法の安定性が保たれる。法の支配という。したがって、法律相互間の矛盾や齟齬はないと国民は信じている。ところが、驚くべきことにそれに反する事態が起こっている。

最近のある全国紙に「住宅団地の再生に、新たな選択肢」と銘打った2面ブチ抜きの大広告が、建て替えを担当する関係企業の提供で載せられている。

これは、「都市再生特別措置法等の一部を改正する法律」が9月1日に施行されたことによる。要点は、住宅団地について区分所有法の建て替え要件が全戸の「5分の4」以上の賛成などと厳しいので建て替えが進まない事態に対応し、「新たな選択肢」と称して、別の法律を改正して区分所有者の「3分の2」以上の賛成で住宅団地の建て替えができるというものだ。

これは区分所有法の建て替え条項を事実上空文化する改正である。この広告は、それを否定して「3分の2の合意で事業推進が可能になったというと、区分所有法が緩和されたと誤解する人がいますが、あくまで今回は市街地再開発事業における改正です」と弁解している。たしかに区分所有法は改正されずそのまま残ってはいるが、今回の法改正では前提として「地方公共団体の指定」という条件さえ満たされれば、区分所有法は関係なく「3分の2」以上の賛成で建て替え可能となるのである。じじつ同じ広告の解説では、「●区分所有法の一括建替決議は不要」と明記されているところだ。

結局この広告は、建て替え条件が緩和されたという事実を「区分所有法は緩和されていない」と言葉の綾でごまかそうというものだ。建て替えに反対する区分所有者の権利を知らない間に奪うものだという今回の措置の本質を覆い隠そうとしている。

たしかに広い意味でのマンション再生のなかで、建て替えは一つの道であり、住宅団地の再生に当たって十分検討の対象にする必要はある。しかし、個々の区分所有者にとって死活的な性格の問題であり、できる限り多数の理解と賛成を得て行なうべきものである。建設業界などの要請のもとで、要件を緩和して必要数がギリギリあれば強行してかまわないなどというものではない。建て替えに直面する管理組合と区分所有者は、いたずらに宣伝に惑わされることなく、主体的に十分検討されたうえで態度を決定されるよう望むものである。(NPO日住協論説委員会)


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