NPO日住協|特定非営利活動法人日本住宅管理組合協議会 > 第3回 訪問相談・派遣専門家スタッフ会議 

第3回 訪問相談・派遣専門家スタッフ会議 

2012年3月13日 午後6時~8時30分 NPO日住協4階会議室

  • 出席者 14名
  • 本部=柳沢明夫・司会

◆ 今回は参加者がやや減って14名であった。大石理事が都合で欠席のため、柳沢理事が司会をした。内容は、初めから「相談事例研究」をすすめた。事例の詳細が不明の場合、「不明だから答えられない」というのでなく、この場合はこうなる、あの場合はああなるなど想定されるケースをいくつかあげて回答してもらうようにした。事例は、実際にあった問答を分解したり、いくつかを合成したりして、適当にアレンジしたもの。判決例を基本的にそのまま用いているものもあるが、判決について議論のあったケース、批判のあるケースを使うようにした(なお、Ⅵの事例〔増築〕は時間切れで扱えなかったので、次回以後に扱いたい)。

◆  相談事例研究

【Ⅰ 理事長の不正と対応】

マンション損害保険が満期になったので、20,500,000円の保険料で新たな保険に入ることを理事会で決め、理事長が担当することになった。予定期限になっても保険契約書が届かないので保険会社で調べてみたところ契約がされていなかった。担当の保険代理店に問い合わせても要領を得なかったので、理事長に尋ね、最終的に理事長が横領したことが明らかになった。弁済については、理事長が親族から借りて15、000、000円を返すが、あとはメドがたたない。

これに関し、①残額について、公正証書にしようとしたが、管理組合が法人になっていないとダメだと専門家に言われた。これは正しいかどうか。それでは、どうしたらよいか。民事訴訟をするのか。②残額は、理事が(他の理事という意味?)報酬を5年にわたって拠出するとの結論になったが、これはよいか。他の理事の責任があるのか。③理事長は理事会選出であり、辞任するが、理事は辞めないと言っている。臨時総会をやって解任するしか方法はないか。④今回は総額の返済のメドが立たないので管理組合員に公表するが、仮に全額返済ができたら、公表しなくてもいいか。一般に不正行為があった場合に管理組合員全体にどのように知らせるべきか、知らせないほうがいいか。プライバシーの問題からみてどうか。⑤刑事告訴をすべきだという考えもあるが、どうみたらよいのか…などの点について見解はどうか。

〈討論〉

あまり取り上げられないテーマだが、実際には相当数おこっている問題として、金銭不正の問題を設例とした。①は権利能力のない社団でも、裁判の当事者となりうるのだから、公正証書ができないという話はないだろうということになった。ただし、理事長が辞任(解任)していない段階では、当事者が双方同一人となるので、不適当とされるなどの問題もありうるとの指摘があった。②個人的犯罪にたいし関係ない他の理事が賠償する責任はないとの結論である。相互牽制とか道義的にどうかの問題はあるかもしれないが…。③臨時総会しかない。④返済の有無にかかわらず区分所有者には公表するのが正しい態度である(一般には役員だけで処理するなど、公表していないケースも多いが…)。ただし、第三者に分かるような公表の仕方にならないよう配慮すべきである。犯罪者であるから、その限りでプライバシーは問題にならないが、当該マンション自体の評価が下がるような形にならないようにすべきであるとの指摘もあった。⑤「断固刑事告訴をすべきである、民事提訴も当然である」との指摘もあったが、管理組合としては組合員の財産をまもる「金銭被害の回復」を第一とすべきで、そのために何が有効かを考慮しながら、告訴や訴訟のことを考えるべきだとの方向でほぼまとまった。告訴の構えなどをするのもいいが、恐喝にならないように注意せよとの指摘をめぐる議論もあった。

【Ⅱ “理事の立候補者を受け付けないことができるか”など理事の選出問題】

1、当管理組合は「ペット禁止」である。次の理事選挙を公示したところ、ペットを飼育している規約違反者が5人立候補した。この5人の立候補を認めたくないが、どのような方法があるか。なお、規約は標準管理規約(2011年改訂前)に準拠しており、立候補資格について当マンションに住んでいる区分所有者という以外の特段の定めはない。

2、昨年の総会で大規模工事を始める方針を決定したさいに、理事会のやり方に疑問があるといって強硬に反対した区分所有者が今回の理事選出のさい立候補した。今回は大規模工事の本番なので、「これから工事を開始する時期に、工事についての理事会提案に反対した人の立候補は受け付けられない」ということにしたいが、可能か。聞くところによると、その人は弁護士と相談して「裁判所に仮処分を求める方法がある」といわれたといるとのことで、仮処分までやりかねない。そんなことをした場合、ひっくりかえされる可能性があるのか。

3、私のところでは、理事は輪番制1年任期で、フロアごとに1人の理事を出すことになっている。ただし、理事会での申し合わせみたいなものだけで、細則などの規定になっているわけではない。任期も規約では一年となっているだけで、再選を認めるとも認めないとも書いてない。実はいま理事長をやっている方が適任で、一生懸命やってくれているので、その人だけ特別に再選をしてもらいたいと思っている。本人も問題がなければ、再任されてもいいと言っている。

どうしたらよいか。

〈討論〉

1.区分所有者の権利であり、「制限できない」という見解が強かった。どうしても理事にしたくないというのであれば、立候補を認め、対立候補を出して落選させるようにするのが正論だということである。この話は実際にあった話で、立候補があったあとで、「泥縄」式ではあるが、「規約違反者については立候補を認めない」ということについて、当該役員選出のある総会において承認を受けて、そのうえで役員選出の議題をかけるという段取りをとったとのことである。それならば、組合員が総会で認めた以上、それはそれで「有効」とみなさざるをえないのではないか、という見解も出された。

2.これは、規約違反もないのに、役員資格がないというのは不当であるとの結論で一致した。3.これも規約上なんの制約もなく、問題なく選出できる。

【Ⅲ 管理組合の土地購入は「全員一致」を要するか】

約500戸からなる団地管理組合法人だが、団地から道一つ隔てた場所約1000㎡を売ってもよいという地主が現れたので、購入したい。区分所有法に詳しい人が、それは区分所有者全員の一致がなければ購入できないと言っている。共有地として買うのではなく、法人が買うのだから、全員一致などという理屈はないと思う。どうか。なお、総会で決めるとすれば、4分の3以上の特別決議を要するか、過半数の普通決議でよいか。仮に購入が決まったばあい、その土地は、自動的に団地(マンション)の敷地となるか。それとも敷地であることを改めて規約で決めなければ、敷地以外に法人が単に所有する土地であるということでよいのか。

〈討論〉

これも実例のあった話である。ただし、実例のばあいは総員の4分の3の特別決議だということで採決され、否決となった。権利能力のない社団ならともかく、法人の所有という扱いにするのであるから、一般の民法が適用され、会社などが土地を買うばあいと同様で、4分の3の特別決議の必要もなく、過半数決議でよいという回答がまず出され、それでも「全員一致」が必要の反対意見が出るなど、活発な討論がされた。

たしかに区分所有者全員の共有であるマンションの敷地の一部を売却するばあいは、全員一致を要することは誰も異論はない。区分所有者の共有地として購入するばあいも、同様の扱いになるのも分かる。しかし、法人とすることができるようになったのは、そもそも(区分所有者の共有でなく)法人が不動産をもつことができるという目的も当然あるわけで、それをも全員一致を要するとするならば、何のために管理組合法人の制度をつくったか分からなくなる(討論では、この点にも異論があったが)。したがって、法律の適用の建て前としては、過半数決議で差し支えない。ただし、念を入れて「重要事項」と判断して特別決議にするという扱いであってもかまわないと思われる。

なお、マンション敷地とするためには、あらためて規約で決める必要がある。ただし、マンション敷地にしてしまえば、処分には全員一致が必要で、敷地にしないほうが現実的だと思われる。

【Ⅳ 大規模工事のさいに専有部分の内装に手を加えたばあい、現状回復の費用はだれが負担するのか】

給排水管の更新工事について臨時総会で決定する運びとなった。共用部分のみの工事(一部専有部分についてオプション工事あり)だが、接続部分の関係で、各戸への立ち入りや一部内装部分に手を加える必要がある。議案書の説明会をおこなったところ、ある区分所有者から、内装部分に手を加えたばあい、完全に元と同じ仕様で回復してくれる保証がなければ工事に協力できないという強硬な発言があった。

標準仕様の部分については、管理組合で工事費から出すのは当然だが、リフォームをしていて現状回復に多額の費用を要する場合も、全額出すと約束することもできないので、発言者が納得しないまま説明会は終わっている。どういう根拠にもとづいて説得したらよいか。それとも当該区分所有者のいう通りにしなければならないか。多額になっても全額出すとすれば、結局他の区分所有者の負担になるわけだが…。

〈討論〉

この問題では、各人からそれぞれ自分の所属組合で経験した実例が出された。多くは、一定の範囲で修復費用を出している。たとえば部屋を完全防音して元通りにするには100万円の費用を要すると請求された件で、話し合いのうえ30万円で決着したことなど。公平の観点からはどうかとの疑問も出されたが、実際に「損害」が発生しているのだから、通常の程度の範囲で、現状維持に要する経費を出すのは当然だろうとみなされる。これは、区分所有法が第6条で、工事などの必要があれば他の区分所有者の専有部分への立ち入りを請求できる権利を規定していることによる。この条文は立ち入りを認めなければならないが、同時に「他の区分所有者が損害を受けたときは、その償金を支払わなければならない」となっていて、支払い義務を明示しているからである。

ただし、多くの組合が、大規模修繕などでの立ち入りやエアコン室外機などの移動の費用を区分所有者本人に負担させているというのが現実であり、また完全修復までいくらでも補償するとなれば費用負担が膨大になる可能性もあって、全額負担を原則とするのが適切だとは思えない。討論の結論は、負担はするが、できるだけ安上がりにしてもらえるよう、よく話し合うのが適当だということになった。

なお、リフォームのさいに管理組合に申請をして許可を受けるのが大方の管理組合の例だから(参加者のなかに全く届出制度のないという管理組合もあった)、申請書に「管理組合のおこなう工事のさいにリフォーム個所が障害になったばあいにも、管理組合は修復費用をいっさい負担しない」などの条件を書きこんでおく必要があることが指摘され、細則(あるいは規約)にもとづく正規のフォームに書くのであれば、拘束力があるので、そうすることを推奨したいとの話もあった。

【Ⅴ 30年前のベランダの居室への改造を原状回復させられるか】
(千葉地裁=させられない、東京高裁=させられる、現在=区分所有者が上告中)

これは地裁の判決を高裁が逆転させたもので、裁判中である。内容は、築34年約180戸のマンションにおいて、法人の区分所有者が持つ2階の店舗のバルコニーを、前の所有者が32年前に居室に改装した。それが10年前の大規模修繕のさいに管理組合が気づき、共用部分の著しい変更にもかかわらず、総会の決議を経ていないとして現状回復を求めていたもの。当該区分所有者は、バルコニーは他の住居に接しておらず避難通路になりえない、20年以上気づかれないほど調和しており、改造を知らずに購入したと反論し、一審はこの区分所有者の言い分を認め、たしかに集会の決議はないが、防災上の支障もなく、いまさら現状回復は余りにも酷だとして、請求を認めなかった。

しかし二審の東京高裁は、共用部分に変更を加えること自体が共同の利益に反し、躯体に悪影響を与えている可能性、バルコニーが緊急時の救援に役立つ可能性もあり、そもそも店舗の専有面積の拡大、共用部分の縮小自体が他の区分所有者との関係で不公平と地裁とは正反対の判断で、管理組合側の勝訴となった。われわれは相談で管理組合の側に立つわけだから、高裁判決の方が適切だと考えるのがよいとは思うが、みなさんの意見が聞きたい。

〈討論〉

これは、設例の最初にも書いたように、現在訴訟が進行中の事件である。かなり議論になるかと思われたが、大方の意見は「当然、現状回復させられる」という高裁の結論が正しいとなった。

関連してエアコン用などで外壁に穴をあけるのも同じかとの質問が出て、これも同様の判断となった。

なお、設例の下から2行目に「われわれは相談で管理組合の側に立つ」と書いた点について意見が出され、「はじめから管理組合の側」というのではなく、「あるべき管理組合の姿」という観点から相談に対応すべきで、弁護士のように多少無理でもあくまでも依頼者の有利になるように動くという立場ではないのではないか、という発言があった。討論でも賛否両論がたたかわされた。結論がはっきり出されたわけではないが、相談の回答にあたって、法律や判例を曲げるわけにはいかないが、そもそも相談案件は簡単にどちらかに軍配をあげられるような単純なものではないのだから、できるだけ相談者の要請に応えられる根拠をみつけてあげるよう工夫することは必要ではないか、裁判所のように中立者の立場をつらぬかなければならない、というわけでもないというあたりが結論のように思われる。

次回第4回は定例の第三火曜日で、4月17日午後6時からNPO日住協4階会議室。


関連記事