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報告 第5回 訪問相談・派遣専門家スタッフ会議

2012年5月15日 午後6時~8時30分 NPO日住協4階会議室

雨のなか、今回も14名が出席し、派遣相談申し込みの進行状況や、派遣事業の実施要項、派遣される人の「誓約書」の内容などの報告を受けた。

派遣相談申し込みの報告のうち、「総会前の監査の補助業務をやってもらいたい」という管理組合があったため、その監査のやり方をめぐって、意見交換があった。それは外部監査をおこなうことを規約に新たに設けた管理組合のことだが、「スポットで一年分を2~3日(2人担当)でやるのは困難ではないか」との指摘があり、「本来、継続的に監査をつづけるのがよいが、その管理組合には資料も整っており、可能だ」、「オフィスでは年一回の実査がおこなわれており、その方式で可能」などの意見や、各組合での監査の実情も出され、予定通り対応していく方向が確認された。

◆  相談事例研究

6件の設例について出席者から回答してもらい、討議をおこなった。はじめに司会の大石理事から、「質問は単純のように見えるが、こまかく追求していくと、どれも複雑な内容に発展するように思われるので、広い角度から検討してほしい」との指摘があったが、討議を通じて多くの問題点が出された。

1、 標準管理規約の管理組合で、共用部分の変更工事が自分の「専有部分の使用に特別の影響がある」と主張してきた。その人は区分所有法17条を盾に、自分の承諾がなければこの工事はできないはずだと言い、この工事の中止を要求してきた。この組合員の主張は適切か? 管理組合はどう対応すべきか? 法律的観点と実務的観点から述べよ。

「この質問では変更工事の内容がわからないが、形状・効用に著しい変更があるか、特別の影響があるか判断が必要」「組合員の主張だけでは、その主張を認めるわけにはいかない。17条の乱用はよくない」「総会で決めればよい」「この件の相談は多い」などが、出された。この問題では多数の裁判例もあり、「特別の影響」とは法律の解釈から言っても「日照や通風に直接の影響(直近に建物を建てるなど)とかなり限定的に理解されており、管理組合は「権利の乱用は許されない」という姿勢で、当該組合員をよく説得するべきだ、となった。また、管理組合の対応では、「最後は弁護士など専門家に対応を相談に行くべきだ」などの指摘もあった。

2、 標準管理規約の組合で、25年前のA組合員の管理費が2カ月分未納であり、その区分所有者は住居を20年前に売却し、現在の所在地は不明である。その組合員の住居には現在別のD組合員が住んでいるが、どういう経緯でその人が所有者になったかは不明であり、なぜA組合員が売却した後、次の所有者に請求しなかったかも不明である。そこで、理事会はこの未納金を「損金」処理すべきとして総会に普通議案を提出した。これは妥当か? 法的観点と実務的観点から述べよ。

最初に「損金処理」というのは税務上の用語で、「債権の償却」などの用語の方がいいのではないかという指摘があった。「損金」でもよいという発言もあり、じじつ滞納の処理の解説でも、この用語がつかわれている文献もある。

処理そのものについては「当然ではないか。妥当だ」という発言もあったが、標準管理規約の管理組合なら法人ではないから、債権は共有物であるから処理には普通決議でも特別決議でもダメで、全員の一致が要るのではないかとの指摘があり、それもそうだということになった。

さらに「法的観点」からいえばそうかもしれないが、大体、この件では管理組合が放置をしていた責任がある。また、「時効」も考慮すべきだとの発言もあった。結論的には、普通議案で提案するということも必要なく、時効で債権が消滅したということで経理処理がなされた、という結果だけ決算上で報告されておればいいのではないかというところに落ち着いた。これには「時効は債務者が援用しなければいつまでも残る」「元の区分所有者が行方不明であれば、現在の所有者に“時効援用”してもらえればよい」などのやりとりもおこなわれたが、法的観点から厳密にいえばそうかもしれないが、実務的観点からいえば、実際上取れないことが明らかであるから、理事会側の判断で事項の処理をしてかまわないと思われる。

これに関し、滞納金の利息の処理について話題となり、多額の元金・利息が発生している実例もあることが、各管理組合の実情にもとづいて話された。利息のほか、損害金として徴収しているケースもある。また、滞納金の清算のさいに利息の減免をしているかどうかについては、おこなっているところと絶対減免しない態度をとっているところとあった。規約(細則)はどこでも「利息を徴収することができる」であるので、「裁量で徴収しない」ことも許されることは間違いない。この件では、たいていの管理組合では利息額は決算書に債権として記載されていないのが普通であるが、利息も債権に計上している管理組合もあった。

さらに、滞納者が元金額ちょうどだけ納入してきて、その後利息は全く払わずこれで終わったという態度をとったときに、対応策があるかという設例が発言された。これは、特約(や細則など)があって、古いものから充当するとか、利息を先に徴収するとかが定められておれば別だが、それが明確でない場合には、利息だけを追加して徴収することは事実上不可能ではないかという結論となった。

3、 標準管理規約では、第59条で収支決算案は総会での「承認」事項となっている。では、総会で収支決算報告が否決された場合の処置はどうすればよいか?

「ごめんなさい」でよいという発言がまずあり、これにたいして「なぜ否決したか」という理由によって、対応が違うのではないかとの指摘があった。つまり、単なる数字の記載の誤り、計算の誤りというレベルのケースの場合は、訂正して再承認を受ければよいだけである。しかし、「否決」となる以上は、業務方針とか運営実態などへの強い批判があるのが通例である。その場合にも支出してしまったという事実を変更するわけにはいかず、否決という結果は理事長(理事会)の「政治責任」が問われる以上のものにはなりえないと思われる。「政治責任」といっても、普通はその総会で退任することになっているのだから、決算否決という結果が残るだけで、管理組合としての反省や教訓というものが、記録されるだけではないだろうか。

4、 団地一括管理の管理組合である。ある棟で地震によって建物に一部損傷が生じた。この場合、団地管理組合で修復決議ができるか? なお、ある棟で「小規模滅失(建物価格の2分の1以下)が生じた。この場合どうか? 「一部損傷」と「小規模滅失」との判断基準はどうなっているのか?

「特定の棟だけの問題だから修復決議はできない」との発言にたいし、規約が「一括管理」と定めているもとでもできないかということで、討議がはじまった。

しかし、まず「一部損傷」と「小規模滅失」とは違うのであって、これを明確にするのが先決問題だということになった。その結論は、「滅失」は建物の少なくとも一部はなくなる(物理的になくならなくても「効用」が確定的になくなることもふくむ)ことであって、単なる「損傷」とは明らかに区別されるものである。

「小規模滅失」の場合は、棟ごとの決議が求められるので、やらなくてはならない。しかし、「一部損傷」の場合は、一括管理の内容に入るとみなして団地管理組合での修復決議でよいのではないかと思われる。ただし、他の棟の区分所有者が、自分の財産でもないものになぜ金を出さなければならないか、承服しがたいとの意見もあった。

5、 ある専有部分を共有している場合の組合員の頭数は一人である。では、ある人が一つの専有部分は単独所有し、その他に別の専有部分を他の区分所有者と共有していた場合、その頭数はどうなるか?

「両方あわせて一人である」「別の専有部分を代表していても、同じ組合員が採決に参加する以上一人と考えるべきだ」などの発言がつづいたが、「違うのではないか」「共有者の構成がかわれば、別の組合員と考える方が妥当」との反論がおこなわれ、結局判例もあるとの発言で、後者が妥当ということになった。

(なお、別の組合員と数える判例とは、マンションではない区分所有建物にかんする1989.3.31の大阪地裁の判決で「Xは757番の3、4、7の各区分所有者であるとともに、758番の1の区分所有権を共有しているから、二号館集会の構成員としては。Yら8名とは別個の構成員とはなり得ない旨主張するが、757番の3、4、7の各区分所有権と758番の1の区分所有権とが所有権の客体として別個に観念されるべきであることは明らか」〔大野秀夫「総合判例研究・マンション法(三三)」=『判例時報』1643号、1998。9.1による〕というものである。また、『改訂新版 マンション管理組合総会運営ハンドブック』〔高層住宅法研究会編著、2005年〕は問いに答えて「区分所有者数の数え方」をケース別に詳しく説明している)。

6、 標準管理規約の組合で、共有部分のガラスが割れていたので、組合員が修理した。この組合員の措置は適切か? この組合員の支払った修繕費用を管理組合は補填する必要があるか?

この質問についても「区分所有法第18条に、保存行為は各区分所有者ができるとの規定があり、当然適切」との発言がつづいた。しかし、この設例は標準管理規約の組合としているので、標準管理規約第21条で、区分所有法第18条2項にいう「特別の定め」をしているわけだから、管理組合が保存行為といえども一括して管理することになっており、この組合員の行為は「不適切」といわなければならない。しかし、この場合は善意で修理してくれたものと思われるので、規約に反しているから費用も払わないというのはどうかと思われ、よく説明して今後は組合に言ってもらうことにして、今回は修繕費用を補填するというのが適切な処理ではなかろうか。

◆  次回は、6月19日(火)午後6時から8時30分まで


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