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管理会社との付き合い方 「相談事例② 管理会社と理事長グル-プが結託?」

- 相談事例② 管理会社と理事長グル-プが結託? -

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Q 千葉県 築19年 120戸 理事11名 監事1名のマンション管理組合の理事(営繕担当)です。今期理事会で、サッシの交換について、管理会社から提案がなされました。300万円余の予算で、今度の総会で承認後、来期に工事を実施するというものです。
当初は、管理会社1社だけからの見積りで、すんなり決定されそうな雰囲気でしたが、私が、「工事仕様を明確にした上で、複数社による見積り合せとすべき。という意見を理事会で述べ、それが承認されました。そこで、インターネット、業界紙等から調べ、また、公的な協会からの情報を参考にして、2社に問い合わせ、管理会社と併せて3社での見積り合せとしました。管理会社の再見積りは大幅に下がりましたが、他の2社には及びませんでした。同じ仕様のもとですから、最安値のA社に発注することで、総会議案にできる、と考えていたところ、理事会では、私と私に同調する理事3名を除いて、理事長を初めとする残りの全理事が、(つまり7対4で)他の二社よりも10%以上高い見積り金額であった管理会社に発注することで総会議案とするという理事会決議がなされてしまいました。理由は、単に、管理会社が安心であり、私が捜してきた業者は不安だというものです。監事も、進め方に異議は唱えず、むしろ理事長と同調して、示し合わせているような発言姿勢です。有体に言えば、前期から執行部を占めている現理事長のグループは、他の諸々の予算執行においても、管理会社の利益誘導のために動いているように見受けられます。それらは、だんだんと住民の間にも周知となり、現理事長グル-プへの不信感は広がってきています。
どのように、対処すれば良いでしょうか?因みに、役員選任方法は、立候補と輪番制の併用で、例年、なり手不足です。私は、来期も任期2年目で理事は留任、新理事長の候補であり、現理事長派の大半は任期が終わって退任の予定です。

A: 証拠がなければ、現理事長とそのグループの理事の人達が、管理会社と結託して不正行為をしていると決めつけるわけには行きませんが、似たような相談事例は、毎年のように、寄せられます。
2013/4/23日経新聞 首都圏版 『マンションは誰のものか』(内なるリスク)にも、管理会社と理事会の癒着について、踏み込んだ内容でのレポ-トが記載されていました。
最後は、管理組合の民意の問題なのですが、不正まがいのことがあっても面倒なことには関わりたくない、高くついても管理会社任せが楽で良い、という悲しい結末に終わるマンションも日本中には多々あるようです。

この事例の場合、理事長グル-プ側にも相応の言い分があるかもしれません。本来は、一方的な見解を述べるわけには行かないのですが、この欄では、仮に、理事長グル-プがなんらかの不正行為を行っていることが濃厚であったとして、それを正常化するための方策について、成功事例からのヒントも交えながら検討を進めてみます。

総会に向けて

正常化をめざす理事の人達は、住民に実情を知らせ、ひとりでも多くの理解者、賛同者を集め、総会に出席してもらうことが重要です。その際は、事実に基づき、できるだけ客観的な資料を用いて説得するようにしましょう。上手く行けば、5分の1の署名を集めて臨時総会の開催要求や、場合によっては、総会で議案を否決するまでの住民運動が起こせるかも知れません。

総会では、現理事長は、工事の発注先として、あえて高い方の管理会社を選んだ理由について、合理的な説明を行う義務があります。特に賛成派、反対派が拮抗しているような場合、正常化を目指す住民側としては、感情的に理事長を攻撃、非難するよりは、冷静な質問により、理事長とそのグループが自ら矛盾してしまうような答弁を引き出すのが、非常に効果的です。

このとき、理事会で反対していた理事は、総会の場でも反対意見を述べ続けるのは、参加者の理解を得にくいかも知れません。しかし、採決の場で議案に反対票を投じることはできます。議案は、それを総会に上程することについて理事会決定しただけであり、総会の場での投票をどうするかは一組合員としての理事個人の自由と考えられます。

しかし、通常は、無関心な人達の議長への委任状により、総会当日での議論を待たずに、(総会議案書を発送した時点で)、議案の可決は決まってしまっているというのが、多くの場合の実態です。

これでは総会でいくら正論を述べても無駄だからと、心ある人達も総会から遠ざかってしまうような「総会の形骸化」が、実は管理組合の民主的運営を妨げている根源とも考えられます。そして、標準管理規約の場合、総会も理事会も、2分の1の出席で成立し、出席者の過半数で可決するということから、どちらにおいても半分の半分、つまり、ほとんど4分の1の意見でも総意となってしまうため、理事長を中心とするごく少数の人達での非民主的な独裁政権となる危険性があることも否定できません。ここで、住民の総会への参画意識を高める方策として、「議長への委任状は、総会の出席者の多数の方へ行使する。」というふうに委任状の扱い方を工夫している管理組合もあります。詳しくは、日住協ホームページ第2期「訪問相談・派遣専門家育成講座」第3回(総会の意義と運営)を参考にして下さい。

来期理事会で主導権を

このように、総会で議案(特に普通決議の場合)を否決することは、通常は至難であるので、ご質問のような事例では、来期での理事会正常化に賭けるのが良く、それには、来期の理事に出来るだけ多くの仲間(理解者、賛同者)に立候補してもらいましょう。理事会の多数派を占めれば、自ら理事長になることが出来、多数決によって正常化を進めることが出来ます。場合によっては、この不透明な工事が総会では可決となっていても、発注の契約調印をする前に、新理事会が臨時総会を開催して、発注先を変えることが出来ます。そのような場合においても、理事会運営の透明性、公開性を旨とし、十分な説明、情報の周知を行った上で、住民の支持を得ていくという手続きを重視して進めることが肝要です。

正義が受け入れられるとは限らない。分かる人は分ってくれている。一人では何もできない。孤立しない。仲間を増やす。勝ち負けのような決着にしない。絶対にあきらめない……。等々が、管理組合運営の正常化に苦難の経験をしてきた人達からの教訓・メッセージです。

管理会社への業務改善要求

本来は、イコールパ-トナ-として、管理会社との信頼関係を構築していく方法を論じたいところですが、相談事例は、悪質な場合ですので、これ以上なめられない、隙を見せない、ための方策や仕組みを考えていきます。

  1. 修繕等の工事の受注は、管理会社には、信頼関係ができるまで、しばらく見合わせるのが良いでしょう。(この場合、~万円以上は管理会社に発注しないというように、金額で決めておく方法もあります。)見積りは、誠実と判断できる数社から取るようにします。その業者のリストは、過去に実績があるところや、あるいは、他の管理組合や管理組合団体での評判を聞いたり、「**設備協会」といった公的な機関に紹介を求める方法もあります。水回り、空調、電気設備、消防設備、等々について、それぞれ、数社ずつのリストを作成します。修繕工事が必要な都度、3社程度で、見積合わせを行い、発注先を理事会で決定します。
    国交省標準管理委託契約書であれば、別表第一 事務管理業務 基幹事務(3)に、「本マンションの維持又は修繕に関する企画または実施の調整  三 …………、修繕又は保守点検等を、外注により、管理会社以外の業者に行わせる場合の見積書の受理、発注補助、実施の確認を行う。」
    とありますから、発注の判断は理事会で行うにしても、工事や点検の実施までの実務のほとんどは、管理委託契約の範囲内の業務として管理会社に行わせることが出来ます。ですから、もしも現在の管理委託契約書内容がこのようになっていない場合には、国交省の指導に合わせるよう、すぐにも改善要求すべきです。
  2. 実際におこなっている管理業務について、毎月の理事会で報告を受け、チェックできるようにするためには、管理委託契約書・業務仕様書の内容を、理事ができるだけ理解しておく必要があります。それには、国交省の標準管理委託契約書と現行の管理委託契約書の相違点について、理事会の場で、管理会社に詳細な説明を求めるのも有効な方法でしょう。
  3. 今まで、管理組合をなめきっていたとすれば、この管理会社の業務は、過去、そして現在も杜撰に行われている可能性があります。設備点検報告書など、保存期間内のすべての提示を求め、場合によっては、その点検担当者本人に面接を求めます。
    請求書はあるのに工事報告書がない、等々、今まで虚偽の報告を行っていたため、人により説明が食い違って破綻し、「今後は真面目にやるから、勘弁してください。」と点検業者が泣きついてきたという事例があります。
    点検の結果、修理が必要、と見積の提案があったが、抜き打ちで他の業者に見せると、直す必要はない、と別の結果となったという事例もあります。
    電力会社の借室内の諸設備の維持・管理は、本来、電力会社の負担で行うべきところ、管理会社から管理組合に修繕の見積提案がなされたので、理事会が抗議すると、管理会社と電力会社の釈明は全く要領を得ず、結局、電力会社の負担で修理は行われた。という事例もあります。
  4. そのような時、謝罪文、顛末書等をできるだけ克明に書かせ、客観的な資料を残すようにしましょう。その場しのぎで謝っても、任期の短い理事のメンバーが様変わりすれば、すぐに元の木阿弥となるケースは枚挙にいとまがありません。
    不誠実であった事実とそれを管理会社や業者が認めた文書の存在は、理事会議事録、総会議案書、総会議事録、等々、公式の文書に記録し、住民へ周知し、後々、いつでも、証拠として使えるようにしておきましょう。そのためにも、議事録は、管理会社の業務にせず、管理組合自ら作成するべきです。
  5. 上記のような手順を取るより、悪質な管理会社は変更してしまうのが、早道かもしれません。総会の普通決議で可能ですが、その方法については、別の機会に述べます。

ここで、強調しておきたいことは、上記のように管理会社・業者に甘く見られないような姿勢と仕組みを組合側が整えておかないと、どの管理会社に変更しても、同じ結果になりうるということです。そして、管理会社変更をコンサルに依頼する際にも、コンサル契約そのものが悪質であったり、コンサルと新しい管理会社が結託してしまう場合もあり、注意が必要です。コンサルの質を見極め、適切に使うのにも、管理組合の自立心が必要なのです。

近年、企業の“コンプライアンス遵守”が重視されています。このコンプライアンスとは、単に、法令、規約、契約等の条文上の内容の遵守というだけではなく、マンション住民の期待と信頼に応えるべく、企業の理念、モラルを遵守することも含めた上で、管理会社は、誠実に、住民へのサービスの質の向上を志向して欲しいものです。

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