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書評:新たな管理方式として、「管理士等管理者・理事会方式」を提案 『新・マンション管理の実務と法律』(日本加除出版)

新たな管理方式として、「管理士等管理者・理事会方式」を提案
『新・マンション管理の実務と法律』(日本加除出版)

理事 大石和夫

『新・マンション管理の実務と法律』(日本加除出版)

著者は、

  • 齋藤広子(明海大学不動産学部教授)
  • 篠原みちこ(弁護士)
  • 鎌野邦樹(早稲田大学法科大学院教授)

の三氏である。
構成は三部構成で、第1部は「基礎用語―マンション管理入門」で齋藤氏が、第2部は「マンション・トラブルの予防と解決」で篠原氏、第3部が「これからのマンションの管理と再生」で鎌野氏がそれぞれ執筆している。

第1部は、既に『マンション管理学入門』(鹿島出版会)の著書もある齋藤氏による、マンション管理に関する50の基礎用語という形での、改めての簡潔明瞭なマンション管理入門的手引きとなっている。

第2部は、マンション・トラブル事例を25挙げての解説であり、バラエティに富んだ読み物となっている。評者にとって興味深かったのは、第一に「Q3」の「不在区分所有者の協力金負担」に関する項で、篠原氏は、この根拠となっている判決の固有事情を正確に解説しつつ、「不在組合員であることのみを理由に協力金を負担させることはできません」「高齢者であることを理由に一律に協力金を負担させることもできません」と、不在組合員への協力金を課すことへの慎重論を展開している。

第3部における鎌野氏による、新たな管理方式としての「管理士等管理者・理事会方式」の提起である。

氏は、まず一般に言われている「高齢化・賃貸化・空住戸化に伴う役員(理事)の担い手不足」という現状認識の点検から始める。そこでは、その背景には、標準管理規約にあるような役員(理事)の資格を組合員に限定し、かつ組合員の「輪番」によって役員を選任するという管理方式を前提としているということを指摘しつつ、「役員の就任は法的義務か」と問い、(財)マンション管理センターの「理事会運営細則」にある「役員就任の拒絶理由」なるものも、法的には成立しないことを述べる。つまり、「輪番制」での役員選出は、組合員の多数がそれを承認し、かつ順番がきたら、たとえ不承不承でも引き受けるという場合においてのみ機能するものであるという。評者も同感である。

こう考えると、高齢化・賃貸化・空住戸化が「役員の担い手不足」の根本的な原因ではない、「理事会方式」をやめて「管理者方式(第三者管理方式)」にしてもよいし、理事会方式を踏襲する場合でも、「輪番制」を採らずに、意思があり、適任な組合員が少数でも存在すれば問題は生じないという。 そのうえで役員の担い手不足の対処法として、①輪番制から立候補・推薦制にする、②役員報酬を支給・増額したり、あるいは役員を辞退したり、賃貸化・空住戸化する組合員には管理費を多く負担させる、③役員資格を組合員以外に広げる等を挙げる。

もっとも刺激的なのは、「これからのマンションの方式」で、これは直接的には「経年マンション」での新たな管理方式として示されている。(なお、氏は一般に言われている「第三者管理方式」という表現を「管理者方式〔第三者管理方式〕」と呼んでいる。 さて、具体的な展開であるが、①マンション管理と「管理者」、②理事会方式とその課題、③管理者方式〔第三者管理方式〕とその課題、④「管理士等管理者・理事会方式」の提案、⑤管理組合と賃借人・自治会・コミュニティ、という五つの論点構成となっている。

「マンション管理と『管理者』」においては、現行標準管理規約での「管理者」(総会決議で理事を選び、理事のなかで理事長を選任し、理事長を管理者とする)と、管理者方式での「管理者」とは、「その職務上の義務の内容及びそれに対応する責任において異なる」という。前者の「管理者」は「選任」であり、そこでは委任契約の締結は具体的にはない、したがって「委任の規定の準用」はあるが、そこでの善管注意義務は「抽象的・一般的義務」であり「消極的義務」でしかない。つまり、区分所有者は理事長(管理者)に対しての善管注意義務違反での具体的履行責任は追及しにくいことになるという。そのうえで、「結局は、管理組合の側で『契約』内容について詳細に明示しなくても、その利益の最大化を実現できるような適任者(専門家)を『選任』し。『契約』内容については、特に依頼を必要とする一般的業務事項以外は報酬に関するものに止め、受託者に関する管理者に『一般的・包括的な権限』を与えることによって『特定の具体的な履行』についてまで責任を負うことができるという方式が望ましい」という。これを可能とするのが「管理者方式〔第三者管理方式〕」とのことである。

以下、「理事会方式とその課題」「管理者方式とその課題」において、①現行標準管理規約にある「理事会方式」、②管理業者活用型の「管理者方式」第三者活用モデル、③管理士等活用型の「管理者方式」を図示し、そのメリット、デメリットを比較考察した上で、それらの問題点を克服する方策として「管理士等管理者・理事会方式」を提唱する。一言で言えば、理事会方式の長所を生かしつつ、管理者方式の問題点(管理組合による管理者へのチェック体制の弱さ等)を克服する方式として「管理士等管理者・理事会方式」が適切というわけである。本方式の最大の特徴は外部の「専門家」である「マンション管理士等」を「契約」で「管理者」として迎え、その者を「理事長」とするという点にあろう(なお、ここでの「管理士等」の概念について鎌野氏は「マンション管理士や関連NPO団体に属する専門家」と説明している)。

現行規約が「理事長を管理者とする」としているのに対して、それを逆転させているわけである。管理者は組合員ではないから、総会・理事会における議決権はないとするが、総会・理事会での議長は務めるという。が、規約案では第35条の「5」で副理事長が「管理組合を代表して、管理者との間で委任契約を締結する」と規定されつつ、第38条では「管理者は、管理組合を代表し、その業務を統括するほか・・」となっており、素人眼には「管理組合の代表者」が二人存在するように感じられる。また、第35条では「管理組合に次の役員を置く」となっているが、その役員の「項目」には「一 管理者」の後は「副理事長」「会計担当理事」「理事(副理事長、会計担当理事を含む。以下同じ)」「監事」となっており、理事長は役員(理事)とされていないように思われる。が、第38条では「2 管理者は、管理組合における理事長として、理事会の議長を務める」ともなっているので、管理者は「理事」ではない「理事長」ということになると思われる。これも素人眼には解りづらいところである。

以上、若干の点で理解しづらいところもあるが、いわゆる「第三者管理」論議への法律専門家からの新たな提起として、私たちにとっても大いに刺激的な提案と言えよう。


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