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賛助会員 トップに聞く 南海工業株式会社 伊勢 雄太 社長

南海工業㈱
伊勢 雄太 社長

(聞き手・川上湛永 NPO日住協会長)

マンションが供給されて、60年がたちました。都市居住の在り方として、完全に定着しました。そのマンションの改修に、一貫として取り組んできたお立場から、お話をお聞きしたいと思います。

伊勢 : 未来を見つめて事業をやってきたわけではないのですが、仕事をやってゆくうえで、どこに支障があるかを一番考えましたね。最初に考えたのは、コンクリート構造物自体が、1954年くらいから、床面積が増えて行きましたが、コンクリート構造物は、かなり、丈夫で長持ちするという事が判りました。1980年ごろは、コンクリート構造物の寿命が25-35年くらいと言われておりましたが、1990年代に入ってバブルがはじけてから、当時の建設省が耐久性向上と言う事を唱え始めました。その為にもCO2や温室効果ガスを削減する必要があり、1997年の京都議定書で、これが批准されました。日本でもコンクリートの構造物の耐用年数を欧米並みに延ばしてゆこうということが言われました。

私どもの会社も、一つの建物にについてその寿命が終わるまでに、3―4回の大規模修繕が必要になってくると考え、その事業を主に展開する事と致しました。スクラップアンドビルドの時代が終わり、耐久性が向上されると、改修の仕事が増えてゆく、市場が拡大してゆくということで、改修工事を当社の主力事業にしてゆこうと考えました。

建替えより、長寿命化を目指すという転換ですね。日住協も、かつて建替え志向の時代がありましたが。建替えは住民の合意がとりにくい、高齢化も進んでますます難しい、丁寧に計画修繕を繰り返しながら長く使ってゆこうという流れですね。

伊勢社長

公団分譲の再生は十分二可能と話す伊勢社長

伊勢 : そうですね。傾向としては、その方向にどんどん進んでいますね。しかし、かつて、開発業者が、例えば駐車場の権利を残したまま分譲して、区分所有者がいざ建て替えしようとすると、その権利を買い取らなくてはいけない、というようなこともありました。法律が整備されていない中でのケースでしたが、過渡期には集合住宅をめぐっていろいろな問題が出てきましたね。それと、鉄やコンリートをつくるときに、大量の二酸化炭素を出すとか、建設業自体の問題も出てきて、耐久性のある、長く使える建物を作ってゆこうという考え方になってきましたね。ただ、昭和30年代、40年代の初めころは住宅公団の三鷹牟礼団地などが開発されたのですが、そのころはウサギ小屋とかいわれ、何十年も使うというコンセプトがなかったですね。ですから、設備配管をコンクリートの中に埋蔵してしまうとか、床下に配管してしまい、改修時に大事になるような施工をしてしまいました。ヨーロッパでは二重壁にして設備配管は後々メンテナンスし易いようにしている建物が多いですが、日本ではそういう発想はなかったですね。それが、いま、問題になっている訳です。

たとえば、ご年配の方の人口が増加しているのですが、住宅公団分譲の中層5階建て住宅では、階段の上り下りがつらくなって、5階に空き家が増える一方、売買でも価格が下がり、資産価値が減少しています。この辺りを、今後どうするかですね。勿論、日本の人口も減少しています。一方、開発も進んでおり、例えば、汐留(新橋)が再開発された際、まだ、不況下でしたから、銀座の老朽化したビルに空室がおおくなりました。汐留の新築ビルと、それほど家賃が変わらないと、古い設備のビルなどでは、空き室がますます出てきますよね。住宅でも、同じようなことが起きてくると思います。空き家というのはコンクリート住宅でも、荒廃していきますよね。例えば5階がずっと空いていると、ハトなどによる鳥害が発生するとかの問題がでてきます。そうすると、それを嫌がってまた出てゆく人が増え、スラム化に繋がってゆきます。我々は、そこをどうやってしてゆくのか、今後考えなくてはいけないと思います。業界全体としてもです。

そうですね。空き家が増えると、管理組合にとって大規模修繕の費用の負担の問題とか、管理運営にも支障が出てきます。空き家の増大は、マンションの管理不全にもつながるし、実は大きな問題です。

伊勢 : 安倍首相は、地方創生を政策として、掲げていますが、難しいのではないか、とみています。IT企業の一部は、納税等の問題で、地方に本社があってもいいが、それで地方に雇用が生まれるでしょうか。人間が、生活してゆくうえで、必要な学校とか病院、あるいは結婚の問題もありますね、結婚相手になる若い人が少ないなどです。それらの問題を満たせないと、逆に東京や大阪などの大都市に人口が集中するでしょうね。世田谷区などは、現在87万人の人口ですが、毎年、1万人規模で増えています。

東京集中は、ここのところ、加速していますね。かつては、高度成長のころ、生産力としての労働力を地方から集め、首都圏に大量に住宅を作ったが、いまは地方には雇用の場がないということで、東京の人口が膨張しています。
ところで、マンションの改修を含めマンション事情は、これから、どうなってゆきますか。

伊勢 : 私は、明るくみています。首都圏には、旧公団分譲の千葉の稲毛とか高州のような大団地があって、住民が定着しています。4年前の東日本大震災でも団地が建物として住めなくなるほど傾いたり、大きな損傷はしていません。先程の東京集中の流れからいうと、地方から来て上京しマンションを買おうとすると購入が困難な人が多いと思います。築地や月島、明石町あたりの超高層マンションは、何千万円から、億という価格です。でも、その10分の1で買えるとなると、手に入る。若い人が地方から出てきて、郊外の団地に居を構えるという流れが少しづつ出てくるのではないでしょうか。

郊外の旧公団団地は、緑も豊かで、学校や生活利便施設も整備されていて、安心して子育てができるという条件がそろっていますね。

伊勢 : 甥が東京都の月島あたりの高層に住んでいますが、超高層マンションばかりで、ビル風は強いし、遊びに行く場所がありません。で行くとなると、アウトレットしかない。住む環境としてはどうでしょうか。超高層マンションは、高層階と低層階との差を考えると、いろんな矛盾を抱えています。むしろ、郊外団地がよみがえるのではないでしょうか。住宅設備を改修しながらなら、100年以上住めるでしょう。

改修技術の面で、取り組んでいることはありますか。

若い社員の創造性を発揮できる仕事を広げたいと語る伊勢社長

伊勢 : 父親から、会社を引き継いだとき、当時大手の防水業者がいくつもありましたが、うちでやっていることと何ら変わりはないじゃないかと思いました。当社で考えると様々な規制の問題はありますが、旧住宅公団の分譲住宅で、新しい居住者の要望にどうこたえるかを考えますと、内部を改装して、若い人が住みやすくするような、リフォームを提供してゆく事、これが一番ですね。うちの社員も、10年、20年と防水、塗装だけをやっていても、面白くないと思います。創造性が発揮できませんし。やはり、若い人に建築業界で働いてもらうには、そこに創造性がないということが、一番大きな問題じゃないかと思いますね。我々もゆくゆくは、共用部分、専有部分を、それぞれ見据えながら、自分の会社の社員の創造性を満たしながら、顧客の要望を、プロとして提案してゆきたいですね。

改修について、前向きに提案するなど、一歩進んだ取り組みですね。

伊勢 : そうですね、あるマンションについて、ここはこういう風に考え、こうしました、と胸を張って仕事をしたいですね。一部上場企業でも、業績が不振になるケースは、銀行の言いなりになり、目先の利益追求に走る事です。しかし、建築というのは、採算、不採算等を考えるだけではなく、社会資産、(建物は社会資産ですから)、という立場から、考えなければいけないと思います。現在のマンションをはじめとする分譲住宅にも、そういうものをどうやっていかせるか、ということをみんなで知恵を絞りながらやっていけばいい、と思います。

管理組合側も、そういう知恵を出さないと。施工業者さんだけが、発想してもダメでしょうね。管理組合とある意味では、共同作業ですね。管理組合に受けいれる下地がないといけない。いまのままでいいです、と拒否されたら、前に進まない。

伊勢 : たとえば、団地で子育てをして、その後その子供たちが独立して出て行くケースでは、また、居住者が夫婦二人になる。引っ越すのも費用が掛かるし、住み慣れたこの場所でいいではないかと考えるようになります。今更、ローンを組んで新築物件を購入するより出せる範囲の予算で、暮らしに合った住空間を考えるケースが多くなります。例えば風呂だけは、豪華にするとか。もし、ろくろを回す趣味がある人なら、ある一室を作業をする部屋に改修してとか、住まい方の変化が現れてくるのではないか、という気がしますね。建築関係の仕事をしていた人がいれば、今までの知恵や経験を提供していただいて、快適な住まいづくりに協力して頂く。高齢化は進んでいますが、元気なお年寄りは必ずいますから、そういう人たちに引っ張って貰うこともありえますね。

2代目だそうですが

伊勢 : 大学出たら、家業を継げといわれました。昭和50年に引継ぎました。その頃は当社は防水工事が主体でした。旧住宅公団の仕事がほとんどで、桜上水、花見川、石神井団地の工事などを初期のころ手がけさせていただきました。昭和60年ごろから、お役所の工事だけではやっていけないと思い、民間工事に思いきって切り替え、今は90%、民間の工事ですね。大規模修繕では、管理組合がどんな工事を望んでいるのかを、改修業者として、的確につかむことが大事だと思っています。

南海工業株式会社
昭和38年設立。本社・東京都世田谷区船橋3-26-7。相模原、所沢、千葉に営業所。屋上防水、外壁塗装、大規模修繕、建物診断、シックハウス対策など。平成14年度、売上13億円。


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