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マンション管理の方式

柳沢 明夫理事

今回のテーマは、前回大石講師から説明されたように、この種の講座でもほとんど例がない内容です。実は、この講座は、いわゆる「第三者管理者」の問題を、私たち自身がいろいろと議論するなかで、私たちNPO日住協こそ、こうした現在の動きと違う形で、管理組合にたいする支援、援助をすべきではないかということで出てきたテーマです。ですから第1回につづいて、この講座の目的そのものを扱っているということもできます。また、同時に、今日のマンション管理をめぐる最先端の問題についての私どもの主張を示していることにもなり、後半の議論で、活発な発言を期待したいテーマでもあると考えます。

もちろん、表題にかかげたように「派遣専門家の育成」の目的をもっていますから、あとでやる独立の講義とともに、管理組合を訪問したさいの姿勢とか、心構えとかについて、私の感じることをそれぞれの場所でお話ししていきたいとも思っています。

ところで、マンション管理ということ自体の考え方が、まだ確立されているとは到底いえず、模索の部分が多い分野です。第一回で大石講師がのべたように「管理組合運営の実践学」を体得するというか、確立していくというか、新たな挑戦をしながら切り開いていく課題が私たちの前にあるということができます。

はじめに この回の目的
~「区分所有者がマンション管理の主人公である」という立場で、管理組合運営の援助にのぞむ基本姿勢に立っていただくこと~

この回は、援助担当者が当該のマンション管理組合へ援助に行ったさいの基本姿勢として、マンション管理組合は、管理業者に委託して管理業務を任せているばあいにおいても、結局は、管理組合(とくに理事会・理事長)が、管理の最終責任をもっているという態度を貫くことを理解してもらうことです。

それは、管理組合が援助担当者に頼りきりになるのでなく、自立的な判断力をもち、将来は、自分たちで自立して運営するものだ、という立場に立つ必要があるからです。

その管理組合の自立を助けるという立場から注意すべきなのは、専門家というのは、どうしても「教えてやる」という感じの「上から目線」になりがちなので、そうはならないよう気をつけることが必要です。

第一回の討論のなかでは、「賃借人的区分所有者」の話もでました。管理会社主導で、管理組合員が何も批判しない状況も報告されました。しかし、その人たちのなかに、少しでも、あるいはわずかの人でも、「区分所有者がマンション管理の主人公である」ということを理解してもらわねば、私たちが援助に入るきっかけもつかめないわけです。また、これは日住協としてだけでなく、マンション管理士としても同様であると考えます。区分所有者は、やがては状況を理解し、主人公にふさわしい役割を果たすことができることを信頼して臨むことが必要です。どこまでいっても専門家に頼るということでは事態は打開できません。逆に、悪徳の専門家にいいようにあしらわれて財産価値を低下させることは必至でしょう。実は、この間、「アメニティ」に専門家と素人にかかわる二つの文章が載りました。一つが8月の「論談」=マンション管理における素人と専門家」であり、二つ目が今月号(10月)の「硯滴」です。表題はありませんが、「餅は餅屋」から始まる文章です。

たしかに専門家はものを知っていることは間違いないでしょう。しかし、個々の実例にあたったときに、その判断が適切かどうかということになると、話はそう簡単ではありません。よく、当事者の移行や気持ちをつかみ、そのうえで「主人公は相談者やその管理組合」「お互いに協力し合って、解決策を見出す」という姿勢につとめるのが肝要だと思います。

この課程では、区分所有者の全員がマンションの管理運営に参加するという基本理念を中核において、マンション法、マンション管理適正化法と管理適正化指針などにその精神が生かされていることをつかみ、この制度の特徴である直接民主主義的な意思決定のしくみの意義を理解してもらうことが中心です。そのことが「理事会・理事長管理方式」に表れていると考えます。ここでは、諸外国の「マンション」の管理運営の仕組みとの対比でそれをつかむことが理解を深めるうえで意義があると思います。

ところでこの課目が用意されたのは、ご承知のように数年前ごろから、第三者を活用する「マンション管理の新たな枠組みづくり」を導入しようとする動きが、国交省の関係者もふくめて検討が開始され、管理会社の団体(高層住宅管理業協会)を先頭に学者やマンション管理士などもふくめて、各方面でいろいろな動きがあることを反映しています。しかし、ここではひろく管理方式にかかわる問題を、大きな視点からみていこうと思います。

2008年3月、マンション管理センターから「マンション管理の新たな枠組みづくりに関する調査検討報告書」が発表されています(委員19氏には穐山会長も入っているが)。そこで、管理者管理方式と信託方式が提案されています。信託方式は、信託法の枠で直ちに現実化しにくく、構想だけの感じもあるので、この説明は省略します。

皆さんはこの「報告書」を読まれましたか?本文68ページもあり、読みやすい形でもないので、あまり読まれていないようです。これが一応、マンション管理の新しい枠組みの出発点と位置づけられるものです。しかし、よく読んでみると、いろいろな調査結果も反映されていて、この調査そのものからは、新しい管理方式が本当に必要だという結論につながっていないことが分ります。また、小規模マンションなどでは、そもそも集会自体が成立しない状況で、管理会社も委託を辞退する事態になっていて、管理者の選任も不可能だという状況だとか、第三者管理者方式はデメリットも多く、さらにリスクが増すことも考えられるという可能性も指摘されています。

また、「マンション管理方式の多様化について志をおなじくする」と称する学者の人たち(玉田弘毅、齊藤広子氏ら)が書いた『マンション管理方式の多様化への展望』(大成出版社、2009年1月)が出されています。この本もまた玉石混交で、玉田氏あたりの法律の説明は正確ですが(もちろん、意見には同意できませんが)、なかにはとんでもない記述も散見します(大杉麻美氏)。

ここでいう管理方式とは

念のために申し上げておきますが、ここでいう管理方式とは、マンション管理業務を管理業者に委託する「委託管理」をしているか、それともいわゆる「自主管理」をしているか、ということではありません。管理の基本方針を、だれがどうやって決め、日常の管理を統括し、最終的な責任を負っているのはだれか、ということをいいます。私が所属している「かわつる三芳野団地管理組合法人」は、548戸ですが、30年近く、管理会社を入れない完全自主管理を行なっています。しかし、ここで、自主管理をお薦めすることはしません。話は、一般的である管理会社に業務を委託したケースをもとにおこなうことは、いうまでもありません。

今おこなわれている通常の管理方式は、方針を管理組合の総会(集会)できめ、日常的には総会で選ばれた理事会が運営にあたり、その最高責任は理事長にあるので、「理事会・理事長管理方式」というわけです。会計や清掃、管理員業務など日常の事務や業務は、管理会社に委託してやることは当たり前で、何もわざわざ「管理方式」を問題にする必要はないじゃないか、といわれるかもしれません。

しかし、わが国では、これが普通のことですが、世界を見ると、理事会が管理運営にあたる方式が一般的というわけではありません。

アメリカでは、州ごとに法律が違うので、いろいろな形があるようですが、一般的には管理組合があり、総会・理事会がありますが、管理者制度という形はありません。州によって違う点もあるようですが、総会ではなく理事会が管理費や管理業者の決定をするなど、理事会の権限が強いのが特徴です。韓国は管理組合の総会ではなく、入住者代表者会議(棟ごとの区分所有者の代表!)が主体となりますが、いずれにしても専門資格をもった人が管理業務にあたります。

一方、フランス、ドイツなどでは、日本の理事会のような住民による執行機関はなく、プロである管理者が主体となり、個々の住民と管理者とのあいだに契約がされるという関係になります。住民から組織される機関が設けられることもありますが、その役割は、諮問や監視にとどまり、方針の決定や執行の権限はありません。

区分所有法などの規定を見る

ところで区分所有法(マンション法)の基礎的なことを改めて復習してみます。

まず第3条です。そこでは、「区分所有者は、全員で、建物並びにその敷地及び附属施設の管理をおこなうたまの団体を構成し」と、区分所有関係が成立すれば、その一つの区分所有関係は自動的に一つの団体を構成しているとみなされます。たとえ2戸の連棟(長屋)であっても区分所有法が適用される関係になっていれば、一つの「区分所有者団体」があることになります。この規定は、いわゆるマンションに限らず、事務所用であろうと、店舗であろうと、いろいろな施設の併用建物であろうと、全部適用されます。

次に第3条の条文は、この団体は、「集会を開き、規約を定め、管理者を置くことができる」となっています。これでいわゆる管理組合、理事、理事長を選ぶ根拠ですが、実は名称も管理組合と特定されていません、規約を決めれば組織の代表者をきめるのは当然ですが、選ぶのは「管理者」であって、代表者ではありません。いずれにしても、この段階の管理組合は、任意団体(いわゆる権利能力のない社団)です。これが後のほうの規定にある「管理組合法人」となれば、法人や理事長(代表理事=名称は理事)は登記され、法人格をもつ団体になります。したがって、この団体には、①集会もせず規約もなく管理者もいないケース(数戸しかないマンションなど)、②管理組合の形をなしたケース、③法人成りをした団体、の3つのケースがあることになります。

第25~28条が管理者の規定です。置いても置かなくてもいい、置く場合どんな人でも可(自然人だけでなく法人もよい、もちろん区分所有者に限られない。普通は理事長があたるが、理事長と別でもよい)です。ですから、私たちも、第三者管理者方式の問題点などといっていますが、現行法上、当事者である区分所有者が認めれば、それを妨げるものは何もありません。まったく合法です。

それなのになぜ関係者が「第三者」方式の実現をめざして動きをすすめているのか、それがなぜ問題なのかは、後でやります。ともかく、これは1962年(昭和37年)の法制定当時、分譲会社や公団などが分譲後も管理することを予定した(管理会社は?)ものだという当時の状況説明があります。第一回のとき大石講師から、マンション管理センターの標準管理規約改正の解説セミナーでの戎正晴弁護士の話の紹介がありました。いまさら「標準とは何か」という議論もどうかと思いますが、いずれにしても、「マンション管理」そのものが、大きくみれば新しい分野で、誰にも通用する標準的な考え方、学問的にいえば定説でしょうか、そういうものがいまだに確立していないということが言えます。その意味では、今後大いに研究もし、実践活動のなかで私たちの考えを広めていけるチャンスがあるとも考えられます。

管理組合法人には「管理者」の規定は適用されません。代表者である理事長が管理を統括する立場に立つのは当たり前だからです。

そもそも「マンション管理」の本質部分とは

ところで、あらためて初歩の初歩に戻って、「マンション管理とはなにか」を見直してみたいと思います。これは、どの入門書をみても、最初に区分所有者になったら管理組合の役員になるのは当然だとか、管理の内容はこれとこれだという記述はあっても、そもそも管理とは何で、どうして区分所有者がやる必要があるのかということは当然の事実だからと、そこまでの説明はされていません。そこで、皆さん方が、訪問先の管理組合で説明する上で、その一例として述べておきたいと思ったからです。

実は私の住んでいる「かわつる三芳野団地管理組合法人」の生活ハンドブックでは、この立場で、管理の基礎の基礎についての説明をしていますし、ここでのマンション管理の経験発表を『マンション学』の34号、35号(2009.10&2010.3)で書かせてもらいました。その最初に「管理組合が他に譲ったり、手放したりすることのできない基本的部分とは何か」について若干、考え方を示していますので、見ていただけるとありがたいと思います。

ハンドブックでいっているその内容は、次のようなものです。

一戸建てのばあいと比較してみると、よく分かります。マンション管理の中心は何といっても建物の共用部分や敷地と付属施設(庭や駐車場など)の維持管理です。一戸建てのばあいは、持ち主が自分のふところ具合を考えながら、自由に判断して、見積もりをとり、発注して業者にやらせます。日常の清掃などは自分でやるのが普通です。

分譲マンションのばあいは持ち主が一人ではありませんから、持ち主たちの判断を統一するために総会や理事会が必要になり、共通に必要な日常の費用、将来発生する長期的な費用を集めること、相互関係、近隣関係の調整などで必要な規則をつくることなどが求められますが、基本は持ち主たちが自由に判断すればよいことです。この判断の部分が本来の「マンション管理」だといえます。修理工事や清掃作業や受付業務を第三者に頼んでやってもらうことは、「管理」ではなくて「管理業務」であって、その発注をして、受任者が限られた一定の「業務」をやるだけですから、本来「管理」ではありません。また、その業務が思ったように正しく、適切にやられているかどうかをチェックすることも、本来の「管理」(=というより監査的機能という意味で設計監理の「監理」といったほうがいいのかもしれませんが)にあたるといえるでしょう。

法律の規定は、争いになったときに解決の基準になるために基本の基本だけでよく、あとは当事者がきめればよいという考え方で区分所有法はできています。

わが国のばあい、持ち主たる区分所有者がお互いを知り、事実上管理組合が成立するまえに、管理業者まで決まっているのが普通なので、管理費や修繕積立金から管理の基本方針まで、だれかがどこかで決めてくれるように誤解している人が多いのが実情です。極端なばあい、理事会の役員まで管理会社の手の上で決まっていくのですが、これは本末転倒で、本来、こういうふうにならないような法的な規制が必要です。

理事会・理事長方式は、わが国の管理方式の経験から生み出されたもの

実は、理事会・理事長方式というのは、法律や制度が作られてそうなったというのでなく、いくつかの初期のマンションで始まったところの、管理組合をつくり、理事会・理事長を選ぶ方式が便利で、有効だということで普及してきたものです。分譲会社や管理会社も、そのように考えたようです。いわば必要性が自然に管理組合をつくり、根づいてきたという性格のもので、それだけの存在理由があるのです。さきほどみた戎弁護士の解説では「なぜか日本は管理組合方式がマンション管理の主流になっています」と嘆いていますが、「なぜか」といえば、日本における実際の実務上の必要が、このやり方を生み出してきたのです。

「区分所有」という概念は昔からあり、明治時代に近代化のなかで現在の民法が制定された当時から規定がありました。第208条のわずか1条だけですが、区分所有についての条文があり、今は六法全書をみると、そこは「第208条 削除」と書いてあります。1962年にこの条文が発展して、独自の法律である区分所有法が制定されたときに「削除」となったものです。いわゆる長屋(いまは、タウンハウスとかテラスハウスとかいいますが、連棟の建物ですね)で、隣との間の壁だけを共有するものです。木造ですから隣との境の壁だけが共有で、その他は外壁も個人所有(いまの専有部分)でした。ですから建物の敷地の土地は共有ではなく、個人所有で、そのため現在でも、長屋方式の区分所有のうち真ん中の自分の専有部分だけを壊して更地にし、裁判になった例もあります。

それが、戦後になって、共同住宅の建設(1953年の宮益坂アパートが最初!)がはじまってきて、いわゆるマンション時代に入り、さきほども述べたように1962年には区分所有法が設けられるにいたります。ところが、このときは区分所有といえども一般の共有関係がはたらくために保存行為は個々の区分所有者が自分ででき、共有物の管理については民法と違って多数決で決められる特則ができましたが、共有物の変更や規約の設定には全員の一致を要するとされ、一人が反対すれば事実上なにもできないという問題点が残りました。それらを解消し、現在の区分所有法の考え方が確立されたのは、1983年の大改正です。

理事会・理事長方式が広がったのは、こうした自然必然性的なことに出発があるのですが、全体をおおうようになったのは、もちろん「マンション標準管理規約」の存在があります。実は、この前身である「中高層集合(「共同」が正しい=訂正する)住宅標準管理規約」は区分所有法の1983年改正に先立って1982年に作成、発表されました。区分所有法改正の国会審議では、改正法案の審議に先立って標準規約ができているのはおかしいではないかとの議員の質問もあります。

まあ、参考資料ならかまわないのですが、わが国ではご存知のようにすべて「通達行政」とか「行政指導」がまかりとおっていて、法律や政令の規定ではわからないところについてまで、微に入り、細をうがって解釈や説明がいろいろな名称の通達でおこなわれ、法律と同じように通用しています。標準管理規約も、たんなる標準で「参考」にすぎません(これは次の「管理規約」の課目で扱うことですが、念のために正確に申し上げておきますと、当初「標準管理規約」が1982年に制定されたときは、分譲業者などが規約をつくるさいの「モデル規約」と位置づけられていたのが、2001年の「マンションの管理の適正化に関する指針」によって、その位置づけも、管理組合が規約を制定、改正するさいの「参考」とされています。

マンション標準管理規約の名称のよる改正は2004年)が、実際には管理組合が準拠すべき規約として通用しているわけです………。現にマンション管理士の試験をうけてみれば、「標準管理規約によれば次のうちどれが間違っているか」などという問題がでるわけですから、標準管理規約こそ「基準」だとされ、法律とおなじように思われても仕方がないところがあります。次回の規約のところでやられると思いますが、標準管理規約は、私たちが相談の仕事をするときでも、どういうふうに参考にすべきか、どこは違う考え方で変更をくわえたらよいかなど、それぞれの管理組合の実情に応じてよく考えて行なう必要があるでしょう。

マンション管理適正化法、適正化指針

しかし、区分所有法はマンション法といわれながら、いわゆる住居でない区分所有関係にも適用されるものです。

マンションやその管理組合の名称が法律的にもうたわれ、マンションの限った法律としてはじめてできたのが2001年に施行されたマンション管理適正化法です。この法律は実は、マンション管理そのものを規定したものでなく、マンション管理業者の規制にかんする規定とマンション管理を助けるとするマンション管理士制度の創設、およびマンション管理適正化推進センター(この法律にしたがって指定されたのがマンション管理センター)の設置を柱とするものです。ただ、この法律のなかにマンション管理適正化指針を別に定めることが記載され、これにもとづく適正化指針がマンション管理そのものについて重要な意味をもちます。

この指針は2001年8月に発表されましたが、さきほどのべた管理組合⇒理事会・理事長方式を正式に行政の担当である国土交通省として位置づけたものです。

「マンションの管理の適正化に関する指針」は、つぎのようにしめしています。

「マンション管理の主体は、マンションの区分所有者等で構成される管理組合であり、管理組合は、マンションの区分所有者等の意見が十分に反映されるよう、また、長期的な見通しを持って、適正な運営を行うことが重要である」、「管理組合を構成するマンションの区分所有者等は、管理組合の一員としての役割を十分認識して、管理組合の運営に関心を持ち、積極的に参加する等、その役割を適切に果たすよう務める必要がある」、「管理組合の自立的な運営は、マンションの区分所有者等の全員が参加し、その意見を反映することにより成り立つものである。そのため、管理組合の運営は、情報の開示、運営の透明化等、開かれた民主的なものとする必要がある。また、集会は、管理組合の最高意思決定機関である。したがって、管理組合の管理者等は、その意思決定にあてたっては、事前に必要な資料を整備し、集会において適切な判断が行われるよう配慮するひつようがある」

これらの指針は、われわれが従来から主張してきた考え方と一致し、活用できるものです。

しかし、国土交通省は、この指針にもとづく管理組合の自立的運営を促進する施策を十分に展開しないばかりか、のちにのべる理事会を廃止して管理会社が「管理者」になる第三者管理者方式に道を開くような検討を開始したり、自主的運営を妨げる管理組合成立前の規約の押し付けなどを改善する方向を提示せず、指針の出しっぱなしという状況にとどまっているといわざるをえません。

理事会をなくす「第三者管理者方式」導入の動き

最近、「第三者管理者方式」という言葉を聞かれたかと思います。分りにくい言葉ですが、この方式を導入しようという動きが、管理業者の関係の団体や政府、関係部局、学者などの一部で盛んになっています。標準管理規約にこの方式にもとづく動きがとくに強まっていることは、第一回の講義でも説明されたところです。この動きの中心は要するに、理事会を廃止して、総会→管理者の直結方式にして、管理者に管理会社が就任し、気ままな運営をすることを企てているものです。それが管理会社の利益優先、市場拡大の考え方を基礎にしていることは見やすい道理であり、すでにNPO日住協も、2007年4月の「論談」で、この構想にたいして「新制度の構想は、マンションのためというより、業者に利する考え方のように思われる」「管理組合の存在を否定する制度の制定には重大な懸念を表明しておきたい」「新制度は、居住型マンションの死命にかかわる重大問題であるから、われわれは重大な懸念をもつのだ」と表明しています。この部分は、最初にのべた『多様化への展望』の本でも、批判的な意見の一つとして紹介されています。

理事会・理事長方式と第三者管理者方式(考えられる基本的な方式=いずれも現行法で可)

  • 管理組合法人(総会)  → 理事会・理事長 → 管理会社
  • 管理組合(総会) → 理事会・理事長(=管理者) → 管理会社
  • 管理組合(総会) → 理事会・(外部)理事長(=管理者) → 管理会社
  • 管理組合(総会) → 理事会・理事長 →(外部)管理者 → 管理会社
  • 管理組合(総会) → 管理者(=管理会社)
  • 管理組合(総会) → 管理者(=マンション管理士など専門家) → 管理会社

このうち、高層住宅管理業協会などが推奨しているのは、下線の方式です。実は前にも述べたように上に示したどの方式も現行のマンション法などの法規のもとで可能な方式です。それにもかかわらず、これまでこの方式がとくに広がる気配もないのは、この方式が本当によいとか説得力があるとかではないことを示しています。そして、先ほどのべたように、わが国特有の、行政指導だとか通達行政だとかいわれる制度の枠にいれて、つまり標準管理規約の一つとして位置づけて、一気に普及をはかろうとしているのです。

ですから、私たちが今の第三者管理者導入の動きのなかで、よくない、否定しなければならないと考えているのは、理事会・理事長方式をなくそうという後の2つのケースです。

第三者管理者といっても、現行の理事会を残して、理事会のもとに他の管理組合での理事長経験者や実務のできるマンション管理士などの第三者を管理者とする方式ならば、「理事会・理事長方式」の一形式とみることもできるわけで、そういうケースを全面否定する必要はありません。前マンション管理士は法律の規定でもそうですが、前回の討論でも発言いただいたように管理組合の助言や援助にあたるという位置づけで、NPO日住協とも基本的に同じ立場で業務をおこなうものですから、「補助」から「主体」に変わることは、法律の想定にはありませんが、矛盾することはないと理解されます。

いま日住協がやろうとしているこの管理組合支援業務も理事長や理事の派遣をふくんでいますので、それが「第三者管理者方式」を推進する立場ではないことは当然で、誤解ないようのべておきたいと思います。現行のマンション管理適正化指針やマンション標準管理規約の範囲で可能な第三者の活用を否定するのではなく、その限りであるなら一応許容範囲だと思います。ワンルームマンションやリゾートマンションでは理事会のない管理者の管理を認めてもいいのではないかと思われる方もあるでしょうが、こういうマンションのなかでも管理会社が運営を破綻させたりしたばあいに区分所有者が立ち上がって理事会を結成し、自立的に再建を果たしたケースを報告する出版物がいくつも発表されており、理事会・理事長方式の可能性を残しておくことの重要性を示していると思います。

また管理組合を法人化すれば、たしかに「管理者」がおかれることはありませんが、法人化をすれば本当に区分所有者が主人公になる理事会・理事長方式がうまくいくかというと簡単にはいきません。やはり区分所有者の自覚的な動きがなければ制度、形式だけではどうにもならないのです。現に、悪質な管理会社(アパ・グループ)が、自分が「管理者」であった管理組合を「法人」にあらため、「理事資格はその管理組合のもとで管理の経験のある者」として事実上、みずからの管理会社の人間しか理事になれない規定を入れている例も最近報道されています。

いま推進されようとしているのは、そういうものではなく、高層住宅管理業協会が理事会抜きの管理規約案まで用意して、役員のなり手不足に対応するなどという大義名分をたてに提唱しているものです。役員のなり手が不足しているというなら、区分所有者の自立的運営をどう助けるかを検討すべきです。

超高層マンションなどをはじめ問題にされているマンションのほとんどは、現在でも管理会社が管理業務の委託をうけているわけで、管理組合に必要な援助をすることはできるはずです。指摘しておかなければならないのは、区分所有者の意向を代弁し、管理会社の業務をチェックする理事会という組織をなくしてしまって、自由に経営をすすめようというのが問題なのです。区分所有者の権限を縮める「理事会廃止」や肝心の区分所有権までなくす「信託方式」などを検討するのは、本末転倒です。

本事業は、第1回でものべたように、あくまでも理事会運営を一時的、臨時的、暫定的にサポートして、区分所有者の自立的運営の可能性をひろげる援助にその目的があることをあらためて確認しておきたいと思います。

実は、この管理組合支援の事業自体が、第三者管理方式の批判の検討のなかから出てきたもので、この事業をつうじて、管理組合の自主的な運営を育てていきたいと思います。


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