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マンション管理におけるトラブル例と対応

Ⅰ.マンション管理と紛争

マンション総合調査の中で永住意識の変化が追跡されているが、昭和58年度では22.5%であった永住志向者が、平成15年度では48%に上昇している。しかし、これに至るまでに、マンションにおける共同生活への不慣れ、供給側の分譲会社の販売方式における配慮のなさ、仲介業者の知識不足、管理会社の不親切、行政の対処不足など多くの理由が重なり、多様な紛争が生じてきた。その中には、区分所有法にかかわるもの、管理規約にかかわるもの、適正化法や円滑化法にかかわるもの、その他管理にかかわる数多くの法律にかかわるトラブルもある。また、管理会社との委託にかかわるトラブルもあり、管理組合と居住者とのトラブルもあり、居住者間のトラブルや、管理組合の運営に原因によるトラブルもある。

これらは全く同一のケースというものはなく、一つの問題にいくつもの発想があることを考えなければ回答にならないが、立地条件・周辺環境・居住者の人間性等々で問題や対応・解決法が変わってくるからである。

これらのトラブルにかかわるときは、その問題の背景を十分に把握したうえで対応する必要がある。また、種々の問題について管理組合が対応策・解決策・予防策・防止策などを求める相談もあるので、各ケースにより最も適当な方法をアドバイスするなどが基本となる、アドバイスからどれを解決方法として選択するかは相談者或いは管理組合が主体的に判断することを指導していく必要がある。

あくまでも相談の受け手側は経験や情報、司法判断などを交えて相談者に問題点の本質をつかむ手助けをすることを心がけることである。

Ⅱ.国交省のマンション総合調査(2008年度)におけるマンション管理組合のトラブルは

居住者間のマナー 63.4% →そのうち 違法駐車・違法駐輪 22.7%
建物の不具合(水漏れ、雨漏り等) 36.8 生活音 37.1
費用負担(管理費等の滞納) 32.0 ペット飼育 34.8
近隣関係(電波障害、日照権) 18.4 バルコニーの使用方法 15.2
管理組合の運営 12.2 専有部分のリフォーム 5.4
管理規約 9.6
管理会社等 3.8

Ⅲ.マンショントラブルのー要因

組合員と役員間の信頼関係が形成されていないことも影響している。相互に信頼関係があれば、円滑な運営が可能となり、特に理事会の運営が適正であれば、役員と組合員との信頼関係を維持することが可能となる。

Ⅳ.トラブル例

1. マンションにおけるペット飼育

管理組合における成功例

■「動物の飼育禁止規定あるマンションでのペット飼育」をめぐるトラブルを条件付容認に切り替えた事例

●検討前の実態

このマンションでは、使用細則で「小鳥及び魚類以外の動物を飼育すること」は禁止されているのに、実際には約20%の犬猫が飼われていた。

●経過

長年努力したが、成果がないので、次の手段として「アンケート」を行い、飼育者を含む「犬猫飼育問題検討会議」を何回か行ったうえで『犬猫特例飼育細則試案』を作成し、総会で特別決議した。試案の内容は次の通り。

  1. 使用細則の「禁止」規定は変更せず、「特例」としての「現に飼育されている犬猫一代限りの容認」
  2. 容認された犬猫には「登録義務」
  3. 「新規飼育」は認めず「犬猫の飼育を漸次減少」させる
  4. 飼育者全員で「ペットクラブ」を組織する
  5. 「紛争処理」は「飼育者の自己責任」で行う
  6. 「不良飼育者」に対して管理組合は「飼育許可の取消し」をするとともに、「駐車場使用契約の解除」等の措置をとる

この細則施行後、ペットクラブの代表が、毎期通常総会にあいて1年間の活動報告を行い、かつ、出席者からの意見等を聴取している。

●今後について

このマンションの場合、約20%に及ぶ「隠れ飼育者」を「特例飼育者」として「公認」することにより、「飼育をめぐるトラブルを減らす」ことの可能性がある。

裁判事例

■争点

管理規約よりも、今飼っている人がいるという事実のほうが優先され、今後もその  マンションでは犬や猫の飼育が保証されていると考えていいのか。

★対応

・飼育禁止の規約・決議の有効性の確立

ペット問題はマンション紛争の中でも多いものです。最近裁判に訴えても決着をつける事例が増えてきました。平成16年3月最高裁判所でペット飼育に関する判決が下ったので紹介する。

このマンションは「小鳥および魚類以外の動物を飼育すること」を規約で禁止していましたが、それを無視して犬猫を飼う居住者がいたので、後に管理組合総会で、飼育中の犬猫に限って「ペットクラブ」を設立し自立管理する以外は飼育を全面禁止することにした。ところが居住者の一人が新たに犬を飼い始めたので管理組合がその人を訴えた。

・判決

  1. 犬の飼育禁止
  2. 飼育禁止を知っていて犬を飼ったのは不法行為で管理組合が勝利した。原告の管理組合の主張がほぼ全面的に支持され、犬を新たに飼った居住者が主張した権利濫用、平等原則違反などが退けられた。

区分所有法にはペット飼育そのものについて何も規定されていない。マンションにおけるペット飼育をめぐる居住者間のトラブルが多発しているものの、ペット飼育を認めるかどうかについては、居住者の嗜好に大きく左右されるので標準管理規約にも規定せず、ただペット飼育に関する規定は管理規約で定めるべき事項とした。

飼育を認める場合には、動物などの種類および数などの限定、管理組合への届出または登録などによる飼育動物の把握、専有部分における飼育方法ならびに共用部分の利用方法および糞尿の処理などの飼育者の守るべき事項、飼育に起因する被害などに対する責任、違反者に対する措置、などの規定を定める必要と思われる。

2.生活騒音

(1)「生活騒音」をめぐるトラブルは「マンショントラブルの御三家」の一つ。

次の3要素が関係している。

  1. 音源になっている住戸の居住者(仮に「加害者と呼ぶ」が使用している「物の材質・仕様等」とその「行動様式」
  2. その音を伝播する「建物・設備の構造、部材の材質・仕様等」
  3. 伝播した音を受け取る住戸の居住者(仮に「加害者」と呼ぶ)の「感受性」と「行動様式」

(2) このトラブルには、次の2種類がある

  1. 「客観的に明らかな騒音」に起因するもの
  2. 「客観性に難点があり、主観の応酬」という構造に陥ってしまうもの

(3)
(2)の1.の典型例は、「加害者の演奏する楽器の音量が大きすぎる」場合や、「遮音性能の悪いフローリングを施工した」場合等。これらは、「加害者の行動様式」を変えてもらったり、「遮音性能を改善」してもらったりすることで、一定の解決が得られる。仮に「加害者」がその是正を否定する場合には、法的解決も不可能ではない。

(4) 難しいのは、(2)の2.の場合。典型例は、「加害者自身は相当気を使い、身を縮めて行動」しているのに、「被害者」からなお「うるさい」という苦情がくる場合である。

(5) (1)の1.が「常識的な者」である場合には、(1)の2.か3.に問題があることになる。

仮に(1)の2.に問題があるにしても、音の伝播に影響するスラブ・界壁等の厚さや区画等の構造部分については、現実問題として改善が困難である。少なくとも「加害者」の責任ではない。とすると、

(1)の3.の問題になる。私たち人は一般に、感受性その他の機能において個々に違いがあり、その上限と下限の間には大きな幅がある。その幅の中のどのレベルが正しいとか、間違っているという問題ではない。どのレベルの人も等しく尊重されるべきだが、マンションという集合住宅においては、「与えられた条件(特に(1)の2.)のなかで「共生」するしか方法はない。そこにこの問題の難しさがあり、解決率が低い原因がある。

●  マンション形式の集合住宅では、相互に居住者の生活空間が接しており、それぞれの居住場所での生活が相互に他に影響しやすくなっているばかりか、それぞれの部屋に行くためなどには共用の通路等を歩行しなければならないのであるから、このような生活空間に居住し、これを利用する住民は相互に他の利用者に迷惑をかけないように生活するということが最低限のルールである。そして、このように密接した生活空間に居住する者は、騒音、振動、臭気等についてはそれぞれが発生源となり得る関係にある以上、それが多少のものである限り、いわば「お互い様」という言葉をもって表現されるように、相互に我慢し合うということが必要であるが、これが、一定の許容限度を超えるならば、それは区分所有法し6条1項所定の「区分所有者の共同の利益に反する」として、このような使用方法が許されなくなるというべきである。そして、これを判断する際には、当該行為の性質、必要性の程度、これによって他の住民らが受ける不利益の熊様、程度等の事情を十分比較して、それから住民らの受忍の限度を超えているかどうかを検討するのが相当である。

(6)フローリング騒音は、どの程度にまで達すれば不法行為となるか

裁判事例

・本件の裁判は、フローリング騒音に対する慰謝料請求を初めて認めた事案としての意義がある。

これまでは、いずれも原告の請求が全部棄却されていた。

●争点

・本件は、鉄筋コンクリート造3階建てのマンションの1階(103号)に住むAらが、真上の部屋(203号)に住むBに対し、Bが絨毯張りの床をフローリング床に張り替えたため、2階の生活音のすべてが断続的に階下のAの室内に響くようになったとして、①慰謝料の支払いと、②差止請求として従前の絨毯張りの床への復旧工事を求めたものである。

Aの上記請求に対し、Bは本件フローリングの床材はL60(軽量床衝撃音遮断性能値)程度のもので、Aらに対し受忍限度を超える騒音被害・生活妨害等をもたらしていないと主張した。

★裁判所の判決

裁判所は、争点1.(慰謝料の請求)について、次のような判断し、Bらに対し原告各75万円(合計150万円)の損害賠償責任を認めた。

ア) Bは本件フローリングの施工に際し、階下への騒音等の問題を意識しながら、事前の対策は不十分のまま、管理組合規約・使用細則に違反する形で、すなわちAの承諾を得ることなく、また管理組合理事会への届出なく工事を施工している。

イ)本件フローリングは、絨毯張りに比べ防音・遮音効果が4倍以上悪化する防音措置(遮音材)の施されていない1階用床材を使用して敷設されたものである。

ウ)従前静かさが保たれていたAらの建物において、B建物に発生する歩く音・椅子を引く音など生活音全般が断続的に階下のA宅に響くようになった。

エ)フローリング工事に際し、防音措置(遮音材)の施されている床板材を使用すれば相当程度防音・遮音され、その費用もそれほどかかるものではないことを勘案すれば、Bの行為は芳しくない。

オ)騒音に対する受け止め方は、各人の感覚ないし感受性に大きく左右されるが、平均人の感覚・感受性を基準としても本件フローリング敷設による騒音被害・生活妨害は受忍限度を超え、違法なものとして不法行為を構成する。

・争点2.(絨毯張りへの復旧工事)については、次の理由でAの請求を棄却した。

ア)騒音被害・生活妨害による人格権、または人格的利益の侵害に基づく妨害排除・予防請求としての差止請求が認められるかどうかは、侵害行為を差し止めることによって生ずる加害者側の不利益と、差し止めを認めないことによって生ずる被害者側の不利益とを比較して判断される。

イ)本件フローリングによる騒音被害・生活妨害は受忍限度を超えたものであり、差し止めを認めないことによる被害者側の不利益は決して小さくない。

ウ)しかし、本件フローリングには有用性もあり、差し止めによる現状回復についてはBに相応の費用と損害をもたらすことは明らかである。また若干問題はあるが管理組合総会でのL45による改装工事を施工するようにとの勧告がなされて、双方がいったんはこれを受け入れた経緯に照らし、差止請求を是認するほどの違法性があるとはいえない。

3.水漏れに対処

居住するマンションの居間の天井に、階上から水漏れが発生し、汚れて大きなしみが出来てしまいました。階上のお宅では水を溢れさせことはないと言っています。管理組合にはすぐ届け出て、対処を依頼しましたが、両方とも反応が鈍く、管理組合から連絡では、階上の方と直接交渉して下さいとの返事でした。階上のひとは、関係ないとの一点張りです。原因をつきとめたいのですがどう対処すればよいか。

■争点

マンションの水漏れは、原因がわからなければ対策も予防もできない上、場合によっては建物自体に重大な瑕疵がひそんでいて、マンション全体の資産価値を低下させる事態にもなりかねません。したがって管理組合理事や管理会社(管理人)が、単純に直接関係する住戸の住人同士の問題とだけ考えているのであれば、それは無責任と言わざるのです。マンション全体の問題になる可能性もあるとこともある。

★対応

1)原因追及の方法

一応階上の方の住まい方には問題がないとしたら、水漏れの原因が特定できないため、その瑕疵は共用部分の設置にあるものと推定されますから(注1)

管理組合はその費用で原因をつきとめなければならない。管理会社は管理組合から建物管理まで委託を受けている場合は、管理人は管理会社に連絡した上、現場を確認し写真などを撮って記録に留めることが必要と思います。更に、管理会社は水漏れがこれだけにとどまっているか調査し、階上宅の建物使用状況も確認が必要です。ポイントはこれら一連の作業が速やかに行われなければならない。また、目視調査だけでは原因が特定できない場合には、階上宅に立ち入って床まではがさなければならないこともある。調査費用は一応管理組合負担ですが、最終的に階上の方の責任ならその方の負担になります。(注2)。ともかく管理会社が早急に原因をつきとめてくれるよう管理組合の理事も交渉し、応急処置がとれるようにすぐに対応が必要です。

2)原因別の対処方法

  1. 共用部分のひび割れなど、共用部分に原因があった場合には管理組合が損害賠償することになります。
  2. 階上宅の専有部分にある設備からの水漏れである場合、例えば排水管が老朽化して水が漏れたような時には、管理規約に別段の決まりがなければ、階上宅の個人負担となります。

しかし現実的に考えると、排水管は通常の使い方をしていることが殆どで、専有部分とはいえ自分では管理できない排水管の老朽化まで責任を負うのはいささか釈然としないし、修繕・更新のために、マンションの構造によっては階下の人にお願いして工事しなければならないのも大変です。枝管と本管は、一体として機能していること、排水管は枝管と本管を同時に清掃する事で効果を生むこと、水漏れは直下の部屋だけでなく他の部屋にも被害が及んでいる場合も多々あることなどを考慮すると、見えない部分の保守点検は一斉に管理組合で行った方が効果的と思われます。

この点を鑑み、標準管理規約では、枝管が専有部分でも共用部分と構造上一体となった部分(この場合では枝管)の管理を共用部分(本管)の管理と一体として行う必要がある場合は、管理組合が一体として管理できると改められました。

特に排水管の老朽化が原因である場合には、前述のように他にも同じようなケースが頻発するおそれがあるので、管理組合の問題として取扱った方がよい。

  1. 階上宅の不注意に起因する場合、例えば洗濯機の溢れ水などは明らかに過失ですから、民法の不法行為となり階上宅の責任になります。階上の住人が賃借人である場合も同様です。

3)注意すべきこと

誰に責任があるかにもよりますが、保険の適用があるかどうかも念頭に置いてください。保険会社にも直ちに連絡することが大事です。専門家(調査会社他)も不十分調査・対策(難しい場所がある)で済ませることがあるので、調査や対策が実施後も1年間位は水漏れの経過観察することが必要です。

この件は、感情的になりがちです。水漏れが発生するとつい階上宅が原因と考え、喧嘩腰にものを言ってしまいがちです。原因が他にあったら後々気まずくなりますので、相手の立場を考え、冷静に階上の方と話すことです。マンションという密接した状況の中でお互いに快適に生活することを考えた場合、様々なトラブルを解決する上で重要なことです。

注1)区分所有法第九条[建物の設置又は保存の瑕疵に関する推定]

「建物の設置又は保存に瑕疵があることにより他人に損害を生じたときは、その瑕疵は共用部分の設置又は保存にあるものと推定する。」

注2)区分所有法第六条第二項[区分所有者の権利義務等]

「区分所有者は、その専有部分又は共用部分を保存し、又は改良するため必要な範囲内において、他の区分所有者の専有部分又は自己の所有に属しない共用部分の使用を請求することができる。この場合において、他の区分所有者が損害が受けたときは、その償金を支払わなければならない。」

4.この事例は、今回の東日本大震災で東京都杉並区で震度5強での地震で電気温水器の配管より水漏れが「地震」よりものか、配管の経年劣化によるものかとの争いであった。

裁判官は「最大でも震度5強程度の揺れは、地震免責事項にいう『地震』には当たらない」と解釈し、区分所有者に、ほぼ請求通りの約150万円を支払うよう命じた。

漏水事故は9階建てのマンション(築29年)で、東日本大震災で6階住戸内に設置されている電気温水器の配管に亀裂が生じ、階下に漏水した。配管は耐熱性の硬質ポリ塩化ビニール管だった。電気温水器は平成6年製で、6階住戸を現在の区分所有者が購入した平成19年にメーカー点検が行われていたが、亀裂が生じた配管部分は判決で「同じ温水器の他の配管と比べても色が薄くあせており、経年劣化していたのは明らか」と認定している。

加害者は個人賠償責任総合補償特約付きの個人財産総合保険に加入していたが「地震免責条項」があり、保険金が支払われないことなどを理由に賠償を拒んだため、被害住戸の区分所有者が復旧工事費と慰謝料の支払いを求めて提訴した。

裁判官は加害者の賠償責任について、当日マンションが立地する杉並区で記録された震度5強でも「耐震性の高い建物では特段の被害はないとされている」と言及、マンションの他の住戸や近隣で温水器からの漏水事故がなかった点などから築29年のこのマンションで地震の振動で配管に亀裂が生じた点を問題視。「温水器配管の強度、設置方法に、通常有すべき程度の耐震性が確保されていなかった」と認定し、温水器の設置、保存に瑕疵があったとして民法717号の土地の工作物責任に基づき、加害者の損害賠償を認めた。その上で地震免責条項に規定される「地震」について「通常の想定を超える巨大かつ異常な自然・社会の事象で大規模な災害が生じる事態を予想した規定」と解釈し、今回の事例のように、加害者である保険契約者が工作物責任を負う場合でも「地震で生じた損害だとして保険金の免責を認める趣旨の規定ではない」と判断。「他の耐震性の高い同様のマンションなら生じなかったはずの配管の亀裂の原因になった地震は、地震免責条項に定める『地震』には当たらない」と結論付けた。

裁判官は「ある程度の地震による振動は、社会一般に通常備えるべき危険と認識され、これに対する耐震性も建物が通常有すべき性能だと認識されている」と指摘し、震度5強程度の揺れは「地震」に当たらない、と認定している。


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