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【マンション管理組合の資産運用について】

【マンション管理組合の資産運用について】

マンション管理組合にとって、修繕積立金は、目的的な資金として極めて重要です。戸当たり月1万円前後が、平均的な積立額です。大規模団地では10億円前後の残高を抱えるところもあります。投機的な運用は論外ですが、安全性を見極めながら慎重な運用を考える余地はないでしょうか。管理組合の資産運用について、どう考えればいいのか、についてまとめました。(日住協事務局・松田昌也)

1)修繕積立金と長期修繕計画

マンション管理組合のお金(金融資産)には、主に、管理費と修繕積立金があります。もちろん、住民から集めた、みんなのお金です。管理費は、家計で言えば、日常のお財布(生活費)のようなもの。修繕積立金は、家計の積立貯金・貯蓄にあたり、将来の大規模修繕に向けて積立ていくもので、マンションによっては、数千万円を超えて、億単位のお金が貯まっています。

修繕積立金の使途としては、不測の事故に対応する修繕費なども一部ありますが、大半は12年周期程度で行われる大規模修繕の費用です。そして、長期修繕計画のグラフに示されるように、使用時期、金額が、概ね予想されています。この長期修繕計画から逆算して、毎月の修繕積立金の徴収額は算出されているのです。(何十年以上も先であろう建替え費用や、被災時での大規模な復旧工事費用などに、修繕積立金を使ってよいですが、通常は、それらを想定に入れた計画として、積み立てられているわけではありません。)

2)修繕積立金の保管と運用・決定機関と決定方法

億単位の巨額になっている場合もある、修繕積立金の保管や運用の方法を、誰が、どこで、どのようにして決定するのかについては、通常は、それぞれのマンションの憲法である管理規約に書かれています。(⇒規約に書いて、規定しておくべきことです。)

国交省「標準管理規約」(参考モデルであって、強制力はない。)では、管理組合の業務として、「修繕積立金の保管と運用は、総会決議事項」という趣旨が書かれています。つまり、理事会で保管・運用方法の案を作り、「住民総会での承認決議を経て決定し、実行する。」という手順が適切であり、一般的です。金融商品の選択や申し込みだけでなく、その変更や中途解約についても、総会決議が必要です。

よって、「標準管理規約」と同内容の規約の管理組合であるならば、理事長の単独の判断で運用先や方法を変更することは勿論、理事会決議だけで運用先を変えたりするようなことも、やっては行けません。理事会決議での、ある程度の柔軟な対応を可能にするには、あらかじめ、総会で承認を取っておくことが必要なのです。

3)修繕積立金の保管と運用についての基本的な考え方

資産の保全は、管理組合のもっとも重要な役割です。住民皆のお金ですから毀損してはなりません。「換金性」や「運用性」よりも、第一に挙げた「安全性」は、はるかに重い優先事項です。

- 安全性 -

二つの要素があり、一つには「ペイオフ」への備えがあります。金融機関が破綻したときは、預金保険機構の保護対象である商品であっても、元本1000万円までとその利息しか保護されません。自分のお金ならともかく、住民皆のお金であることを理事会は重く考えるべきです。実際に、2010年には日本振興銀行が破綻し、初のペイオフが発動され、1000万円以上は保護されない部分が生じています。

次に、「元本保証」という要素があります。金融商品によっては、安全に見えて、実は元本保証でないものもあり、管理組合のお金の運用は、元本保証の商品に限定すべきです。

換金性 -

使いたい時に、あるいは支払うべき時に、換金できないのでは困ります。ですから、「換金性」も考慮すべき重要な要素です。ただし、先に述べたように、長期修繕計画によりあらかじめ使用時期が想定されているので、計画がしっかりしていれば換金性は乏しくても構わない、という考え方もできます。

金額が小さい範囲での不測の事故への備えは、一部を決済性預金等で確保しておけば良く、金額が大きい不測の事故への備えは、ペナルティなしでの中途解約や、融資可能な手当てを確保しておく、等で考えておけば良いでしょう。

運用性 -

リタ-ンを求めれば当然ながらリスクが生じます。住民皆のお金なのですから、安全な商品の中から選択するのが大前提です。よって、全額を、利息はつかないが完全に保護されている決済性預金だけにする、という考え方の管理組合があっても、決しておかしくはありません。

4)修繕積立金の保管と運用・金融商品の比較

修繕積立金の保管と運用【金融商品の比較】    クリックすると拡大します

添付の比較表には、安全で一般的なものだけを記載しました。他に、修繕積立金信託、積立保険等もありますが、前者はペイオフ時保護されないこと、後者は元本保証でないことや損害保険契約との兼ね合いもあることから、今回の検討では除きました。

1億円を1年間預けると、課税前の利息は、利回り1%で100万円、利回り0.1%で10万円、利回り0.01%で1万円です。これを目安にすれば、運用益については考えやすいと思います。

 

すまいる債 -

独立行政法人「住宅金融支援機構」(全額政府出資・旧「住宅金融公庫」)による、マンション管理組合の修繕積立金に特化した債券。安全な商品の中では、利回りは国債10年物に次いで高い。10年間継続して積立が原則、1年経過後はペナルティなく中途解約可能。利回りは10年目がもっとも高く、早期に解約するほど利回りは小さくなるが、決して、損にはなりません。

管理規約、長期修繕計画、積立額等について、いくつか要件があり、すべての管理組合が必ず利用できるわけではありませんが、通常は大丈夫です。住宅金融支援機構の努力により、積立の中断や増額、限度額、等々において、年々、管理組合にとって利用しやすいように仕組みが修正されてきています。

中途解約を前提とし、積立開始時期をずらして複数の積立を行うような方法も可能になりました。(⇒通帳を複数持って、長期資金用と短期資金用で使い分けるようなイメ-ジです。)

2012年積み立て分は、10年間の年平均利回り0.46%程度です。安全で、利回りが高く、理事会にとっては、住民に説明しやすく総会承認が得やすい、ということも、長所と言えるでしょう。

日本国債 -

管理組合の理事長名で購入し易いのは、新型窓販国債。毎月発行。郵便局よりも、りそな銀行の方が事務手続きなどの面で利用しやすいようです。個人向け国債は、管理組合では不可。既発債の購入や証券会社での売買は、管理組合には不向き。2年物(利回り0.06%程度)、5年物(利回り0.2%程度)、10年物(利回り0.8%程度)がありますが、中途解約は元本割れのケ-スもあるので、満期までの保有を前提とすべきです。(満期まで保有すれば、元本と予定利率が保証されます。)緊急時は、国債を担保にして融資が受けられる、というメリットがあります。

- 決済性預金 -

利息はつかないが、銀行が潰れても全額保護。

-普通預金 -

ペイオフ時には、元本1000万円以内とその利息までが保護。

- 定期預金 -

ペイオフ時には、元本1000万円以内とその利息が保護。普通預金等との優先保護順位=安全順位は、

①満期までの期間が短い順
②次に金利が低いもの順

よって、長期で高利回りの定期預金の方が、普通預金よりも危険度は高いことになります。

定期預金の中途解約は可能であり、元本+利子(最低でも、普通預金の利回り)は保証されます。

格付けや自己資本比率等、運用先の金融機関の安全度の監視と判断ができる管理組合であれば、総会決議を経て、定期預金での運用を考えて良いでしょう。その際は、金融機関を分散する検討も必要です。しかし、どの銀行が安全であるかの判断は簡単ではなく、かつ、住民が納得できる説明を理事会は考えておく必要があります。また、一時的に金融知識に詳しい理事がいたとしても、その人が、ずっと担当することはできないので、長期にわたって継続的な監視と適切な判断ができる仕組みを作っておく必要があります。

ここで、どのような銀行、信用金庫、信用組合等であっても、元本1000万円以内であれば、破綻しても、利息まで保護されます。ですから、数億円を1000万円ずつ多数の金融機関に分散して、高利回りの定期預金で保有する、という裏技的な方法もあり得えます。しかし、事務手続きが煩雑であろうし、毎年の決算時の残高証明書の入手など、経費もかかります。

団地一括管理において、団地と棟の修繕積立金を分け、同じ銀行に預けているケースがあります。預金保険機構によると、その銀行の破たん時には、預金名義が違っていても、「管理組合は一つしかない」ので名寄せされる、とのことです。よって、棟毎に1000万円以内であっても安全とは言えないので、住民への説明の際にも、注意が必要です。一方、棟別の管理組合ができている場合は、名寄せの心配はいりません。

5)修繕積立金の運用と保管・具体的な進め方

- 総会議案 -

当期末の修繕積立金会計の次期繰越金額、次期予算での支出予定額、今後の長期修繕計画での支出予定額、毎年の修繕積立金収入の額、等の数字を元に、運用に充当できる金額の根拠を示します。金融商品を比較検討し、その商品を選んだ理由を示し、その具体的な資料も添付します。これらを盛り込んだ「第~号議案 修繕積立金資産運用の件」の議案を総会に上程し、承認を得ます。

- 資金運用細則の策定 -

今までに述べてきたような理由から、資金の適切な保管および運用のため、資金管理についての細則を作り、総会承認を取っておくことが望まれます。将来の理事会は、(仮に金融知識に不慣れであっても)、その細則のル-ルに従って対処すれば良いのです。

「第1条 目的 第2条 管理の原則 第3条 資金の種別 第4条 取引金融機関及び金融商品 第5条 通帳の管理 第6条 報告 第7条 業務の委託 第8条 細則外事項 第9条 細則の改廃  附則(効力の発行日)」のような構成になります。第4条において、金融不安等の非常時での解約や取引停止についてのル-ルを盛り込めば良いでしょう。

日本評論社 「コンメンタ-ル マンション標準管理規約」 第7章 会計 P.227 に 「マンション管理組合資金管理細則」の詳細な事例があるので、参考として下さい。     以上


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