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報告 第4回 訪問相談・派遣専門家スタッフ会議

2012年4月17日 午後6時~8時30分 NPO日住協4階会議室

◆  出席者 15名

本部=大石和夫・司会、川上明美、西山博之、松田昌也、柳沢明夫

◆  派遣事業申し込み&問い合わせ

この一カ月間に申し込みや問い合わせがあった以下の4件について、大石理事から詳しい報告がおこなわれ、正式に申し込みを受けた場合には、それぞれについて地域的に近い人に担当してもらうということで呼びかけ、担当者も決めた。

◆  相談事例研究

以下の9件の設例について出席者から回答してもらい、討議をおこなった。事例のうち(1)~(4)、(6)~(8)は、『マンション学』最新号(第41号=2012年冬)で報告されている相談例を参考にした。討議内容の概要と結論は、次に記すとおりである。

(1) 電子メールによる議決権行使書は有効か。規約には「電子的………」という規定はない?

「有効ではない」「本人の書いたものだという証明がない」というのが結論となった。そもそも規約に規定がない場合の電子メールを利用した議決権行使書は無効であり、規約にあってもいわゆる「電子署名」のような厳密な署名の認証手続きが求められるというのが原則である。ただし、規模の小さい管理組合などで諸般の事情から本人の意思が明瞭なばあいには、実際には認めてもあまり不都合は生じないのではないか、という指摘もあった。

(2) 総会にあたり、ある住戸について転売された形跡があり、区分所有者の特定について疑義が生じた。理事長はどのような対応をすればよいか?

理事長は区分所有者が誰かという点について、特別に調査をするほどの義務はなく、一般の善管義務を果たせばいいのであるから、届出者を区分所有者として扱えばよい。とくに問題があれば登記名義などを調査すればよいが、一般にはそこまで求められてはいない。

(3) 総会直前に監事が突然転居し、行方がわからなくなってしまった。理事会としては、監査についてどうしたらよいか?

監査がおこなわれることは規約上も当然求められていることであるが、監査の有無は、決算書の採択にとって必要条件ではないので、「監事の転居により、監査ができなかった」と報告して採択をもとめることでよい。もちろん、時間的に余裕がある場合は、臨時総会など規約にしたがって新たに監事を選任すればよいが、この設定は、その時間がないという前提である。なお、理事会自身がやるなどは論外で、不適切だが、『マンション学』の当該記事がふれているような、前期の監事など適当な人を理事会が選任するとか、理事会の決定で会計士等に頼むとかの臨時の措置をとることは、理事会自身が監査をうける立場からいって不適当であるというのが、大方の意見であった。ただし、実際には総会で役員を選出し、その役員で理事と監事を互選するなどという実例もたくさんあるという実態からいえば、上記のような臨時の措置をとることもあながち排除すべきではないという見解も表明された。

(4) 規約上は普通決議で上程可能な議案を、理事会としては重要な議案と考えたので、あえて特別決議事項として上程した。これは有効か?

無条件に「有効だ」という発言も出されたが、討議の結果、標準管理規約(単棟型47条3項5号)にあるように「その他総会において本項の方法により決議することとした事項」という類の規定があるばあいに、それにしたがって本案の採決前に「特別決議によって採決する」ことを総会の過半数議決で決定したのち、特別決議で採決できるというのが正確であるとの結論になった。なお、通常は理事会が議案にその旨を記述しておく必要があるが、総会会場で「特別決議」とすべきことが求められ、可決され場合にも、この規定の適用は可能であると判断される。なお、次の設例とも関連するが、それぞれの議案が普通決議か特別決議かが議案書のなかに明記されていない例も多くあるという問題点が指摘された。

(5) 本来は特別決議事項である議案をうっかりして普通決議事項として上程してしまったが、採決した結果は4分の3以上の賛成であった、この場合、この議案の成否はどうなるか?

これは、ほとんどの意見が「有効」というところに落ち着いた。たいていは、遅くとも審議の途中で特別決議事項であることが判明するはずだが、設例であるから議決後まで気がつかなかったことになっている。(4)と逆の側からみた問題である。区分所有者は議案の内容で賛否を決めるのであって、「普通決議」か「特別決議」かによって態度を変えるなどということはほとんどないから、採決結果が4分の3以上であれば何の問題もないであろう。ただし、相談で経験した判決例(判例集未搭載)で、これと同じ内容で「特別決議を要するのに、普通決議として提案された以上、決議は成立しない」というケースがあり、この設例も有効だとはいえない、という強硬な主張をする人が1人いた。

(6) 途中入居してきた組合員は、規約集などは譲渡人から引き継ぐべきであるのか、それとも組合が途中入居者にも規約集を配布する必要があるか? また、賃貸人についてはどうか?

途中入居の新たな組合員といえども、管理組合と組合員との関係であるから、管理組合が配布するのが基本である。賃借人は、管理組合と直接関係しないから賃貸人(組合員)から説明するとか規約集を貸与するなどしてもらうのが原則である、との発言が最初にあった。これにたいして、原則はそのとおりで、異議ないがとして、各人から自分のところや相談先の実情報告があった。規約集は前所有者から引き継いでもらうのを基本としているところも相当あり、規約のほかマンションの案内をいれて大部のものを配布しているところもあって、1000円とか2000円とかの費用を徴収しているところも結構多かった。

(7) 専門委員会設置に関する事項は、いわゆる「細則」として規約に準じる総会決議事項(過半数決議)とすべきか、それとも「要項」ないしは「規則」という名称で理事会決議事項とし、機動的に運営できるようにするべきか?

専門委員会の扱いは、管理組合ごとにきわめてまちまちである。細則を決め、総会でメンバーの名前まで決定しているところもあるが、討論の方向としては、理事会で運営規則もメンバーも機動的に決定できるほうがいいいのではないかということになった。理事会が1期で交代なのに専門委員会は継続している委員が多く、専門委員会の方が実態をよく知り、強力になっているところも多いが、専門委員会は諮問委員会として、あくまでも理事会の下にあるということでなければならないことが強調された。

(8) 総会に普通決議議案と特別決議議案の双方が提出された。が、総会出席者は組合員の議決権総数の60%であった。この場合、特別決議議案の取り扱いはどうすべきか? 審議しないか、それとも審議し採決したうえで否決か?

「せっかく集まったのだから審議はする」「審議しても意味がない」「否決が明らかだから、採決はしない方がよい」「議案として提出されているのだから、結果が明らかでも採決をすべきだ」「後のことを考えれば、審議をしない方がいい」などいろいろ出された。しかし、結局は会場にいる組合員の意向次第で判断すればよいので、どれが適切ということは決められないのではないか、ということになった。

(9)=これは、3月に積み残しとなった分で、実際の裁判例からとったもの=専有部分を一斉に増築することを総会で決定した。この増築工事に反対者がある場合、決議そのものが無効となるか。反対者の住戸の専有部分だけは工事をせず、隣接の住戸にかかわる共用部分の工事だけをすることができるか。その場合の共用部分について、反対者にも共用部分の工事費用を負担させることができるか】(大阪高裁1992年1月28日判決=決議は有効で、無効確認の請求は利益がないので棄却し、反対者に費用の負担はさせられない)

この事件は、ひじょうに複雑で、当初は増築反対者が2人いた。1人は途中で賛成に転じ、増築に参加した。残った1人が、この裁判では決議の可否を争い、管理組合はこれに対して共用部分の増築費用の支払いを反訴で請求した。区分所有者はこのほかに、別の裁判で増築部分の撤去を請求している。

本来、増築は1棟の全員が賛成しなければできないと解されるし、実際にも、この判例のような例は稀である。判例の解説者も「問題が残るものの、やむを得ない判断であろう」(升田純『要約マンション判例155』312頁、学陽書房2009年)とのべている。

民事裁判では裁判所は、双方の主張にかかわる内容だけしか判断しないので、ここでは判断が出されていない問題も多くある。たとえば、区分所有法上、共用部分や敷地の持ち分は、専有部分の面積比であるから、増築しない住戸があればその区分所有者は持ち分が減る。そうならないためには、規約上の措置などが必要。専有部分に特別の影響のある共用部分の変更は、当該の区分所有者の承認を要する(公式の解説では「日照権」がその典型的な例とされている)。増築を拒否している住戸が最上階ならばよいが、それ以外の階であれば、共用部分の増築のみでも当然日照権に影響があり、拒否できることになる(本当にできるか)。そのほかに今後の修繕積立金の負担はどうなるかとか、反対者の意見が変わって将来増築を求めた場合に費用負担はどうなるかなどなど、きわめて複雑な問題が派生すると考えられる。

仮に、この件で相談があったとすれば、全員一致がない以上増設をあきらめるしかない(反対者の説得をつづける)という回答をするのが適当であるように思われる。

質問事項のほうで見解まで踏み込んで書いていることもあって、これに対する「異見」はあまり出されなかった。ただ、裁判所は建物が出来上がっていれば、よほどのことがないかぎり「壊せ」とか「もとへ戻せ」という判断はしないのが通例で、本来は全員一致がないと増築はダメだが、つくってしまえば、現実には「やり得」の面があるという指摘があった。

◆  次回は、5月15日(火)午後6時から8時30分まで


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