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「理事会運営の具体的な考え方について」マンション管理問題評論家 村井忠夫

5,6月はマンションの総会シーズン。新しい役員で理事会がスタートします。マンション管理は、理事会の運営次第で決まります。日住協に最近寄せられた理事会運営をめぐる電話相談やメール相談のケースに基づき、理事会運営の考え方について、長年、管理組合の運営を研究しているマンション管理問題評論家の村井忠夫さんに、寄稿して頂きました。

 

理事会運営の具体的な考え方について

1.お知らせいただいたこと:判断材料として

メールでお知らせいただいた下記のことを判断材料として対応の仕方を考えます。

  1. 理事会で一部理事の意見がぶつかり、収拾がつかない
  2. 大企業の幹部の会議運営が染み付いていて、とにかく効率優先で、たまらない
  3. 管理会社の担当者が席していて、なんでも理事長が担当者にふるので、担当者が主役みたいだ
    ※会議は2時間をめどに、必要以上の気遣いは無用のほか、理事会の運営について、このほかに、どんなことが注意点か。
    ※フランクな運営にすれば、意見がどんどん出て、理事会活動が前向きになるのではないか
  4. 理事会で、理事のひとりがICレコーダーで、毎回録音をしている、理事会での論議が一部区分所有者にもれていたとしたら、録音を禁止すべきか
    ⇛ 録音を禁止すべし、と回答すべきか、理事会の論議を断りなく外部に漏らすことを禁止すべきか・・・

2.考え方の面から:どんな場合にも当てはまること

4点にはいくつかの共通点が浮かんできます。その要点をあげます。

  1. すべて理事会の運営方法をめぐる実行上の問題であること
    ⇛理屈ではなく、どう判断して行動すればいいかという「考え方」「動き方」の問題になる。
  2. 具体的な理事会運営を述べた公式の基準となるものはまったく存在しないこと
    ⇛法律や標準管理規約にはまったく取り上げられていないので、手がかりとなる情報がない。
  3. 理事会や総会など組織的な意思決定の仕方はすべて管理組合ごとの個別事情を反映するため画一的な規範化が難しいこと
    ⇛すべて「ウチのマンション、ウチの管理組合ではどうするか」という個別的でローカルな問題になる。
  4. しかし、組織の公式意思決定の内容を確実化する基本条件として会議の成立要件や議決要件など最低の条件がコンセンサムミニマムとしてある程度まで示されていること
    ⇛個別事情に対応しながら組織的な決定を確定する基本条件がある。ノールール状態は許されない。
  5. 理事会や総会による物事の取決めはルールによる基本条件にマンションや管理組合ごとのオリジナルな個別条件を加えた独自の工夫で運営する方法が現実的で実行しやすいこと
    ⇛自分のマンション、自分の管理組合向けに基本原則をどうアレンジするかが急所になる。

3.実行の面から:すぐ実行した方がいいこと

具体的な実行条件は、たぶん次のようになるのではありませんか。ただし、これは経験的な視点ですから、多くの経験交流によってさらに内容を充実させる必要があるでしょう。

  1. 毎回2時間を原則として理事会の運営自体を定型化すること
    ⇛ 毎回の運び方を定型化しないと毎年メンバーが変わる理事会の運び方が、年度ごとにバラバラになる。物事を決めるための方法について、年度ごとの経験の蓄積を図るべきでは。
  2. 議事資料をきちんと用意すること
    ⇛順番制などで決まった理事が多いから会議に不慣れな人が必ず混じるはず。そうした人にも議事を理解できるような資料を用意する。理事会の前に読んでおけるよう事前に配布できればなおいい。
  3. 毎年最初の理事会で理事長から会議の進行ルールを説明しておくこと
    ⇛年度替わり当初の理事会で、議長となる理事長から発言時間、発言順などのルールを説明しておく。年齢や個性、居住経験などの違いによる意見が無差別に展開すると、声の大きなもの勝ちになる!
  4. 議事録を必ず一定期間内にまとめて理事全員に配布すること
    ⇛理事会の密室化を防ぎ、理事会自身の無責任化を防ぐ議事録の意味は大きい。議事録のコピーを掲示板に張り出し組合員全員向け情報として広報ツールに活用する例もある。
  5. 管理会社スタッフはあくまでオブザーバーとしての出席者であることを確認すること
    ⇛管理会社関係者はあくまでオブザーバー。理事会判断のための参考情報の提供者あって管理組合メンバーではないから議事の決定権はない。管理会社依存度が大きいほどここが曖昧になる!

4.具体的なポイントとして:どんな管理組合にも共通する実行可能な急所

今すぐは間に合わないとしても、現在の任期中にいずれ具体的な実行のチャンスがくる実行上のポイントを述べてみます。

  1. 年度当初の理事会運営は特に注意する
    ⇛自己紹介や議事の運び方のほかマンションの建物全体情報など、問題意識も知識もない人が議事についていける工夫が必要。次年度の理事長がきまったときの申し送り事項の必須項目。
  2. 役割分担を決めて全員が発言できるような運び方を考える
    ⇛役割が決まっていれば「やったこと」「これからやること」の発言機会が回ってくる。役目がはっきりしていないと発言が偏り理事会がもめやすくなる。役割確認は管理規約の決め方のチェックの機会にもなる
  3. 年度後半の理事会は翌年度への年度替わりを考えて運営する
    ⇛少なくとも年度末から数か月前の理事会では通常総会の準備が議題となるはず。そうなれば、次年度の事業計画・予算編成、そして最大の難問である役員改選などが議題となる。
  4. 理事会の会場にはカレンダーを用意する。できれば月間予定表やマンション構内図も
    ⇛議事は具体的な手掛かりがあるほど進めやすくなる。かなりの議事は日程が絡むからカレンダーは要る。居住歴が短い理事もいる可能性があるから、マンション構内マップなどもほしい。
  5. 年度替わりの新旧理事会の引き継ぎ方法を定型化する。
    ⇛管理組合の実力は年度替わりで露呈する。新旧理事会の引き継ぎ体制があいまいだと管理会社依存度が急増する。引き継ぎは標準管理規約など公式情報の盲点中の盲点。独自の知恵の見せ所。

5.お知らせいただいたケースをどう考えるか:あくまでヒントとして

以上を前提としてメールでお知らせいただいたケースの考え方を簡単に書きます。メール以外に判断材料がまったくないので、本当の答を見つけるためのヒントとしてお考えください。

1.理事会で一部理事の意見がぶつかり、収拾がつかない・・・

⇛収拾がつかなくなるのは議事の整理がつかないまま理事会に持ち込んだからだと思います。ほかにもいろいろな理由が考えられますが、議長を務める理事長が理事会の進め方に問題がありそうです。キーポイントは、議長となる理事長に次の点を事前に考えてもらうことが必要だと思います。

  1. 毎回の議題の検討手順をどんな順序で進めるかを考えておくこと。
  2. 理事の一人一人についてある程度の予備知識を得ておくこと。年齢や居住歴が意見の違いを生む。
  3. 議事検討の最初に、議長として「この議題を理事会で決めなければならない理由は何か」「もし理事会で決められなかったらどういう問題が生まれるか」をきちんと話すこと。
  4. 意見がぶつかる議題ほど理解の程度が違いやすい。簡単でもいいから資料を用意すること。
  5. 意見の違いが特に大きくなるような場合は、臨時理事会の開催の提案も考えておくこと。

2.大企業の幹部の会議運営でとかく効率優先になりやすい・・・

⇛現役の大企業幹部が管理組合の理事を引き受けるケースは非常に稀です。多分、これは「元・大企業幹部」ではないかと思います。この例に限らず、管理組合の理事はお互いの詳しい事情を知らないことが多く、名前と顔が一致する状況を確保する形で理事会が始まるケースが少なくありません。

  1. 会社と違って管理組合にはいっさい上下関係がありません。毎年メンバーが変わることが多い理事会では会社にありがちな何年も続く人的関係がありません。加えて、同じところに住む近隣居住者同士の遠慮や気遣いなどもあります。そうしたことを考えながら、会社と管理組合の違いをある程度気を使いながら丁寧に話して理解してもらうしかありません。
  2. 「効率優先」はケースによります。管理組合はとかく曖昧になりやすく理由不明なまま昔からの慣習によって物事が決まる傾向がありますから効率優先が望ましいこともあります。
  3. 大企業幹部の効率優先主義と感じている人がほかにも多いかどうかは、できるだけ何人かの意見を聞いて確かめる必要があると思います。感じ方の問題は微妙だからです。

3.管理会社の担当者が出席していて何でも理事長が担当者にふるので、担当者が主役みたい・・・

⇛管理会社の関係者が理事会に出ている意味が正確に理解されていない可能性があるのではないかという気がします。

  1. 管理会社の関係者が理事会に出席するのは珍しくありません。また、理事がとかくマンションの全体認識を持っていないケースが多いことを考えると、理事会が知らないことをよく承知している管理会社に聞くことが必要なこともよくあります。
  2. 理事会もマンション全体の仕事をしているはずですが、実際には《自分の住戸の玄関ドアの内側》だけしか知らない理事が多いことを考えなければならないでしょう。管理組合に必要なマンション全体の実情情報は、管理会社の方がはるかにたくさん持っていることは否定できません。
  3. そういう意味で、管理会社の関係者の存在感が特に大きくなることを実感するのは、理事会自身がまだほとんど経験を持っていない年度初めの時期です。
  4. そういう場合も、管理会社の関係者はあくまでもオブザーバーとして出席しているのであって、理事会としての議決に参加する正規メンバーでないことは、どんな場合も同じです。
  5. 大規模修繕工事の工事会社選定など議事によっては管理会社の参加を断ることが必要な場合もあります。
  6. こうしたわけで、理事会にとって管理会社の存在は無視できませんが、意識しすぎると、かえってマイナスが大きくなります。上手な判断が必要で巣が、あくまでも理事会自身の考え方で決まる問題です。

4.理事会で、理事のひとりがICレコーダーで毎回録音をしている、理事会での論議が一部区分所有者にもれているとしたら、録音を禁止すべきかどうか

⇛録音自体の是非と理事会公開の是非を整理して考えるべきだと思います。

  1. 録音の是非ではなく録音の目的が問題でしょう。録音自体は議事録をまとめるために必要なことがありますから、いっさい録音禁止にまで踏み切るわけにはいきますまい。
  2. いまはICレコーダーなどが普及していますから、録音禁止は事実上無理のような気がします。
  3. そこまで考えて、なお録音が問題になるなら、いっそ理事会で検討した方が早いでしょう。
  4. もしも「禁止」のルール化が必要だとしても、単純なルール化には注意点があります。ルールを作ると、ルール違反が問題化しがちですし、年数がたつとルールそのものが見直しを必要とすることにもなります。ペットの問題がどれほど厄介になっているかを考えるといいでしょう。このレベルのことをルール化する是非を理事会でよく話し合う必要がありそうです。
  5. 理事会の内容が区分所有者に漏れることが問題だというのは、ちょっと理解しにくい気がします。普通は、「漏れる」よりもむしろ「公開する」方が望ましいとさえいえるからです。理事会の傍聴を考える例もあるほどですから、オープンな理事会がいいと考えることも普通です。「漏れる」ことが問題にうなる管理組合の組織風土がわかりにくいので、録音の是非以外の点は意見をご容赦ください。

まとめ 理事会は管理組合にとって実力が問われる応用問題の典型

理事会の運営は管理組合にとって物事を決める組織実力を問うテストに似た感じの問題です。しかし、法律や標準管理規約など成文化されたものをよりどころにして判断すると答が見つかりません。結局、自分の住むマンションの全体的な実情を建物の人間の双方からどれだけ把握しているかによって決まる問題だと思います。

 


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