大規模修繕工事:サンロイヤル東山管理組合
工事概要
東横線中目黒駅から徒歩5分。目黒区東山。
地上9階建て、住戸52戸、店舗9戸、倉庫1戸などが入る複合型マンション。築19年(工事当時)。管理会社は日本ハウジング㈱。
今回、1回目の大規模修繕工事である。平成22年10月頃、理事会で大規模修繕工事について、管理会社と検討中であった。
平成22年
- 12月12日
- 理事長ほか理事が、日住協主催のマンション大規模修繕「設計監理方式の導入・コンサルタント選定マニュアル」の説明会(東京会場)に参加し、大規模修繕工事支援制度を知った。
平成23年
- 3月
- 管理組合より支援制度説明の要望があり、管理組合を訪問し説明した。
- 4月
- 理事会で「建物一日診断」を承認。
- 5月
- 「建物一日診断」を実施。
- 8月~9月
- 今後の計画及び資金計画検討について管理組合に提案した。
- 9月15日
- 大規模修繕工事支援制度契約。引き続き設計事務所3カ所に「調査・計画・工事監理」の見積を依頼した。
- 11月2日
- 3社でヒアリングを行う。
- 11月10日
- 理事会で設計事務所内定。
- 12月3日
- 臨時総会で設計事所を決定。
平成24年
- 1月
- 調査開始
- 2月
- アンケート調査。
- 3~4月
- 基本計画作成。
- 5~6月
- 実施設計。
- 6月30日
- 定例総会で工事計画及び概算金額の承認を得た。
- 7月
- 施工業者を業界紙で公募を行い12社の中より6社選定して、見積依頼した。
- 8月
- 見積を受け取り、内容を検討した。
- 9月
- 施工業者3社ヒアリング及び内定。
- 10月
- 臨時総会で施工業者及び請負金額が承認された。
工事は、平成25年2月着工。道路に直接面した市街地マンション特有の足場仮設の困難さや、タイル表面の光沢を残す目的から洗浄剤を酸性系から中性系のものに変更したため汚れ除去に時間を要したことなどで、工期が当初予定よりは約1カ月延びた。工事を丁寧に実施した結果であり、大きなトラブルもなく7月初旬に完成した。引き続き設備を含めた「長期修繕計画」を検討中である。
当管理組合は、理事長が平成23、24、25年度と3期継続して就任し、工事の必要性、内容の理解、組合内部のまとめ及び管理会社との調整、また、支援制度、設計事務所並びに施工業者との相性も良く、管理組合の要望を十分にとり入れ、工事は準調に進んだ。
サンロイヤル東山の工事の特徴
八生設計事務所 1級建築士
鈴木和弘
サンロイヤル東山は、外壁が手摺壁内外を含め全てタイル張りで、ラスタータイルと呼ばれる虹色に輝くタイルが使用されているところが特徴的なマンションです。また9階建ての建物の6階から上は斜線制限で少しずつセットバックしており、外壁は南・北・西側の三面が斜壁になっています。
修繕設計時には、タイル欠け、ひび割れ等の部分的に張り替えるタイルの色、質感と、タイルの大部分が既に剥がれていた北西面斜壁の改修について、特に入念に検討しました。
張り替えるタイルについては、マンションの屋外階段下のスペースに新築時のタイルが少し保管されており、そこからタイルのメーカー名が分かったため、そのメーカーに問い合わせて保管タイルを送り、一般的には施工会社が決まってから行うタイル見本焼きを設計段階で行ない、色・質感に問題が無いか確認しました。
大部分のタイルが剥がれていた北西面斜壁の改修については、またタイルで復旧しても剥がれる危険があったため、
残っているタイルを全て剥がし、新たに金属(ステンレス)葺きの屋根に改修する計画としました。
今までと素材が大きく変わることから、近隣で斜壁を金属葺きに改修した物件を理事会、日住協と見に行き、改修後の外観のイメージを確認した上で、決定しました。
工事実施時では、外壁タイルの洗浄に当たり、予定していた洗浄剤をテスト施工したところ、ラスター特有の虹色の輝きを落としてしまったため、洗浄能力の低い洗浄剤に変更し、その結果予定よりも洗浄作業に時間がかかり、工期が延びてしまうトラブルがありましたが、定例会議で理事会に逐一報告しながら進めて、無事に工事が完了しました。
何よりも、大規模修繕実施に当たって管理組合が決定すべき項目、内容を、日住協のアドバイスを聞きながら理事会が良く理解されていて、順序良くステップを重ねていったことが、大規模修繕工事を順調に終えた大きな要因であると思います。
大規模修繕工事を終えて 「大規模修繕工事支援制度」活用の薦め
サンロイヤル東山管理組合理事長
加藤 文隆
2011年9月15日に、「大規模修繕工事支援制度業務委託契約」を日住協と締結以来、二人三脚で進めてきた工事が無事2013年7月5日に竣工しました。
約2年に及ぶ大仕事を終えての、理事長としての感想を述べます。
結論から申しますと、「この制度を活用してよかった。」の一言ですが、その理由についていくつか挙げたいと思います。第一は、初めての大規模修繕であり、理事会が責任を持って工事を計画・実施するためには、第三者の専門家がいることにより、理事会及び総会での合意形成が得やすかったことです。また、業者選定にあたっての「しがらみ」を排しやすいということも、制度導入の理由でした。
第二は、設計・工事監理を行う設計事務所の候補数社の紹介、工事会社の募集・選定にあたってのアドバイスにより、適確な業者選定ができたことです。
具体的には、設計事務所は、面接により「八生設計事務所」を選定しましたが、高度な専門性に裏付けられた設計段階での的確な提案内容と工事管理でのきめ細かいチェックのおかげで、満足できる仕上がりとなりました。また、工事会社選定にあたっても、ヒアリングのポイントについての設計事務所及び日住協のアドバイスが参考になりました。
今年度は、今回の工事を踏まえた長期修繕計画の策定を進める予定です。
最後に、あくまでも決定するのは「理事会」であり、「理事会」としての方針をしっかり持つことが、この制度を上手に活用する前提であることを蛇足ながら申し添えます。
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